第2章 安土城
私達が二人してぽかーんとしていると、明智さんはくつくつと笑って言った。
「口が開いているぞ」
そう言われて私達はばっと口元を手で覆う。
「ほんっと、お前ら面白いな」
政宗はからりと笑った。
豊臣さんが政宗を「こら」とたしなめていると何やら廊下からドタドタと人が走ってきた。
「失礼します!」
入ってきたのはさっき軍議で見た気がしなくもない顔の人だった。
まぁ大半は寝ていたから気のせいかもしれないけど。
「何だ」
信長様を始め武将たちの視線が武士に注がれる。
「西方の大名が謀反のために挙兵したとの事にございます!」
「なっ」
豊臣さんが立ち上がる。
「信長様!この秀吉にお任せください!即座に片付けて参ります!」
「いや、俺が行く。最近戦がなくて体が鈍っていやがるからな」
政宗も蒼い目をぎらりと光らせて言った。
戦に行きたがるなんて変な人達だ。
私だったら絶対嫌。行きたくない。
すると信長様が扇子をぱちりと鳴らして言った。
「よい、此度は俺が行く。秀吉、五百の兵を夕刻までに用意しろ」
「御意」
そう言うと豊臣さんは立ち上がって「失礼します」と言い、報告に来た武士をつれて広間を後にした。
豊臣さんが去ると信長様は言った。
「貴様らも連れて行く拒否権はない。まぁせいぜい俺の役に立て」
(まさかの拒否権なし!?)
私は立ち上がって言った。
「連れていくのは私だけにしてください!」
(拒否権がないのならばせめて椿だけは危ない目にあわせたくない)
すると椿も立ち上がって私の肩をゆすった。
「何言ってんの!私だけ留守番は出来ないよ!」
私達が言い合うのを見ていた信長様は扇子で私を指すと言った。
「貴様の気概、気に入った。連れて行くのは貴様だけにしてやる」
信長様はとってもイケメンなのに目はひたすらに冷たくて、思わずそらしたくなったけど、そらしたら負けだと思ってまっすぐ見返した。
少しして信長様はほう、と言って私から目を離すと「軍議は終いだ」と言って広間から出ていってしまった。
私は暫く動けなかった。