第2章 安土城
─その頃の政宗と絢
政宗は城下町から少しそれたところを通って安土城に向かって駆け抜けていた。
私はもう政宗の早駆けを止めるのを諦め、政宗が言ってた通りエンジョイすることにした。
「お前、順応早いな」
「いやいや、コツ掴んだだけだよ」
「こつ…?」
「えっと、やり方?とかどうしたらいいか、みたいな」
「なるほど。じゃあお前、もう俺が早駆けしても文句はないな?」
「あっても聞いてもらえないじゃん」
「ばれたか」
そう言って政宗がははっと笑った。
「…もう」
私が呆れてそう呟くと政宗が言った。
「そろそろ黒金門だ」
「くろきんもん?」
「安土城の正門のことだ。三成と家康がいると思うぞ」
「家康…さん?」
私が頭の上に疑問符を浮かべながら尋ねると、政宗は信じられないというような声色で言った。
「お前…家康知らねぇのか⁉」
「徳川家康ぐらいしか家康さんは知らないよ」
「その家康だ」
「またまたぁ!自分があの伊達政宗と同じ名前だからってー」
私は思わず笑ってしまった。
(ここの人達変だなぁ)
「…まぁいい」
政宗が立派な門の前で馬を止める。
「着いたぞ」
そこには10人くらいの武士らしき人がいた。その前に石田さんともう一人、暖色系で色を固めた着物の人が立っていた。
「お帰りなさいませ、政宗様、絢様」
「あぁ、今戻った」
「…ていうか政宗さん、あんたまた信長様達置いて早駆けしてきたんですか」
と政宗が言ってた家康さんと思わしき人が呆れたように言った。
「いいだろ、別に…っておい家康。何か労いの言葉ひとつでも掛けろよ」
「一応無事だったみたいですね」
家康さんはぼそりと言った。
「ったく。ほら絢、こいつが徳川家康だ」
「へ⁉あ、絢です!よろしくお願いします」
(折角安心してたのにいきなり話を振られてしまった…!)
私がそう慌てて自己紹介すると、家康さんは隣の石田さんを睨み付けて言った。
「…お前、二人とも女って言ってたよね」
「はい!お二方とも女人ですが…?」
またもな男に勘違いされたことに気付く。
「失敬な!私は女です!この着物は仕方なく!男と間違えられたので!着ているんです!」
(ここの人達失礼すぎない⁉)