第2章 安土城
「行っちゃった…」
私は二人が消えた方をぼんやりと眺めた。
「忙しない奴よ」
信長様もその様子を眺めながら面白がってるような声色で呟いた。
「…そろそろ城下だ」
光秀さんが目線で前方を示す。
確かに建物が見えた。ただし木造一階もしくは二階建てのものだった。
(そっか…。この距離動いて現代的なものは何一つなく、人里でこれだったらもう…)
私はため息をこぼした。
(認めるしかないのかな…)
橋を渡れば城下町。
安土城までもう少し。
「何か気になることでもあったのか」
「いえ…。ちょっと、改めて実感しちゃいまして」
「何をだ」
「ここは、戦国の世なんですね」
「当たり前だ」
さっきまで通ってきた数々の田んぼ、目の前の城下町の風景、山の中腹にそびえ立つ城。
何もかも、私の知っている景色ではなかった。
電気や機械の存在がなかった。
こんなの現代の日本ではありえない。
やはりここは、戦国時代なのだろうか。
そう考えてからはっとした。
(信長様があの織田信長だとしたら…、私達は歴史を変えちゃったってことなんじゃ…⁉)
更に頭を働かせて状況を整理する。
腹心の部下豊臣秀吉、その家臣である石田三成、裏参謀の明智光秀の存在。
だが信長より一回り以上年下のはずの伊達政宗がそう見えない。
なにより皆身長が私と同じくらいのはずなのに甲冑越しでもわかる現代にいればモデルになれるくらいのスタイルの良さ。
そして皆何故か短髪。
おかしいことだらけだ。
そうぐるぐる考えている間に城下町を過ぎていった。
そして、思案している私を光秀さんが観察しているのに私は気付かなかった。