第1章 出会い
男の人達が去った後も崖の横で私達はぼんやりと夜の森を眺めていた。
するとあの眼鏡を掛けた男の人が言った通り、馬の足音が聞こえてきた。
「誰かな」
「さぁ」
私がそう言っているうちに周りがほのかに明るくなり、馬に跨がった明智さんともう一人の男の人が私達の前に現れた。
「ここに居たか」
「ってことは捜してたのはこいつらか?光秀」
「ああ」
明智さんはそう言うと私達の方を向いて言った。
「御館様がお前達に戻れと仰せになった」
「「えっ」」
私達は思わず後ずさる。
「いや、普通に嫌です」
「むしろ連れ戻しにいらっしゃった意味がわかりません」
二人で馬上の二人を睨み付けながら言うと、隻眼の男の人が突然笑い出した。
「はははっ、そういうことか」
「「⁉」」
「お前ら面白いからなんじゃねえか?」
「…いや、笑いのセンス無いんで」
私がそう言うと隻眼の男の人は不思議そうに私達の方を向いた。
「笑いの、扇子…?」
「違いますけど、そうです」
「そんなこと今はどうでもいい」
そう言いながら明智さんが更に近づいてくる。
「大人しくしろよ?…落ちたくなかったらな」
明智さんは手前にいた椿を抱えると馬の方向を変える。
隻眼の男の人も間を空けずに私を馬上に抱えあげた。
「このへんにちゃんと掴まっとけよ」
そう言うと明智さんと隻眼の男の人は夜の森の中を駆け抜けていった。