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〈イケメン戦国〉紫陽花の咲く季節

第1章 出会い


それからまた、私達は走った。
このときばかりは運動部であることに感謝をして。


その時、

「うおっ」

「うわぁっ」

私は誰かとぶつかった。

「椿っ!大丈夫⁉」

そう言いながら絢は繋いだ手に引っ張られる形で後ろを向く。

「すみません」

私は茶髪の男の人に謝る。

「いや、大丈夫だ。それよりお前ら崖に突進しやがって…イノシシか?それとも死にたいのか?」

「どう見ても違いますよね⁉失礼ですよ⁉」

そう言いつつ私はこの男の人の体幹の強さに驚きを隠せずにいた。

(小走りだったとはいえ走ってた私がぶつかっても一瞬よろけただけで体勢は崩れなかった…)

「しらねーよ」

そこに後ろから足音が聞こえ、低めの声が目の前の茶髪の人に呼び掛ける。

「おーい、幸。天女達と逢引きかい?羨ましい限りだ」

「違いますよ。なんで俺がこんなイノシシ女共と…」

「だから、その呼び方は失礼だって言ってるでしょ」

「何が失礼なんだよ。事実じゃねぇか」

私達がぎゃあぎゃあ言っているとさっきこの人に呼び掛けたらしき男の人が私達の前に歩いてくる。

「物の怪の類かはたまた天女かはわからないが…また会おう、美しいひと」

(なんつー歯が浮くような台詞を…)

私が居心地の悪さに少し後ずさると後ろから更に声がかかる。

「おい、信玄。早く行くぞ」

振り返るとオッドアイの綺麗な薄い金色の髪の男の人と、眼鏡を掛けた見覚えのある男の人が立っていた。

「「…!」」

(ねぇ、椿、あの人…)

(…うん)

もう一度男の人の方を見ると男の人も気付いたのか、口元に人差し指をあてた。

それを見て私達はとりあえず頷いた。

「…馬が二頭、こちらに来ています。行きましょう、謙信様、信玄様、幸」

「見つかったら面倒だなー。名残惜しいが天女とは別れよう」

「さっさと行きますよ、信玄様」

「ふん」

私達は崖の横で四人の男の人達が去るのをただ黙って見送った。

(石碑の前にいた人だったね)

(見た目がずいぶん変わったけどね)

(あれはさっきの出来ごとだったはずだよね…?)

(不思議だなぁ)
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