第1章 出会い
私と絢があれだけ長い時間走っていたというのに明智さんと隻眼の男の人は迷わず馬を走らせ、あっと言う間にもといた本能寺らしき所に私達を連れ戻した。
「御館様、連れ戻して参りました」
「御苦労」
明智さん達は私達を下に降ろすと自分も地面に降り、馬の手綱を近くの木に結びつけた。
結び終えると隻眼の男の人が私達の方を向いて言った。
「そういや自己紹介がまだだったな」
「は、はぁ」
「俺は伊達政宗だ。よろしくな」
「椿と申します」
「絢です」
「「よろしくお願いします」」
「ああ」
私達が伊達さんとの挨拶を終えると武将の方々が一斉に信長様の方を向いた。
そして豊臣さんが進み出て訊ねた。
「信長様、この二人をどうするおつもりで…?」
すると信長様は不敵ににやりと笑うと言った。
「安土に連れて帰る」
「なっ」
「は?」
「え?」
私達は目を合わせた。
「俺を救った女共だ。幸い今日の報せを受けて野暮な行動に出るやつも居よう。こやつらは良い様に使えば…」
「諸大名を動かしやすい、ですね」
椿がぽつりと言う。
「その通りだ」
(椿、なんか順応してない??)
(…いや、このへん見ててわかったんだけど、ここは私達が知ってる所じゃない。この人達に保護してもらった方が安全だと思っただけ)
(…そっか。私は椿を信じる)
(絢…!ありがとう)
私達がヒソヒソ話していると豊臣さんが私達を睨み付けながら言った。
「信長様!こんな怪しい奴等を…!間者かもしれないではないですか!」
「よい」
「ですが…!」
(…椿、かんじゃって何???)
(えっ!昨日授業でやったじゃん…。スパイの事だよ)
(へぇー…、は⁉スパイ?私達が?)
(って疑ってるみたいだね、豊臣さん)
私達がまたヒソヒソと話していると豊臣さんが振り返って言った。
「お前ら!そこで何を話している⁉」
「かんじゃが何かを椿に聞いてました」
「ほう」
「保身の為か…⁉」
豊臣さんは疑うのを止めない。
「猿」
「はっ」
「貴様がどう言おうとこやつらは連れて戻る。異論は認めぬ。よいな」
信長様がそう言うと豊臣さんは項垂れて言った。
「御意」
そうして私達はこの織田信長と称する男の人が住む城、安土城でお世話になることになった。