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〈イケメン戦国〉紫陽花の咲く季節

第1章 出会い


暫くして、さっきの人が着物らしきものを抱えて戻ってきた。

「お待たせ致しました。椿様、絢様、着替えられる場所へご案内致しますね」

そう言って石田さんは小さめの天幕に案内してくれた。

そして椿に中に入るよう促す。

「椿様、お着替えが済みましたら私を呼んでくださいね」

「「えっ」」

「絢様、どうかされましたか?」

「私はどこで着替えたら良いんですか?」

「殿方と女性を同じところで着替えていくわけにはいきませんので椿様がお済みになるまでお待ちになってくださいね」

「いや、あの…」

その時私は視界に黒い羽織を捉えた。

「三成」

石田さんは驚いたように振り返る。

「御館様、どうしてここに…?」

「貴様の後を追ったまでだ」

「そうでしたか」

「俺一人ではない。秀吉に光秀もおる」

(いや、そこ偉そうに言うことじゃないでしょ!)
私は心の中で突っ込む。

「して三成、あやつも女子(おなご)よ」

「「えええっ」」

「ちょっと、豊臣さんまで驚かないでくださいよ!」

「だって、お前、髪が…」

「背丈もおありですし…」

「たしかにショートカットだし165㎝あるけど!失礼じゃないですか⁉」

「しょおと…?」

「せんち…?」

「あ~、もう!」

それを見て光秀はくつくつと笑った。

秀吉らに爆弾を落とした張本人の信長はそれを気に留める様子もなく、興味深そうに絢のリュックを眺めていた。

「貴様が背負っているそれは何だ」

信長がリュックを指差す。

「へっ?」

私は思わずなんとも間の抜けた声を出してしまった。

「なんとも間抜けな面だな、絢」

すかさずそう光秀がにやにやしながら言った。

「放っといてください!えっと、信長様、だっけ?これはリュックサックですよ。このご時世に日本でリュックを知らない人に出会うとは…」

「このご時世に御館様を知らなかったお前もどうかと思うが?」

「いや、知ってますけど…今生きてたらそれこそ化け物でしょ」

私がそう言うとさっきまでポカーンとしていた豊臣さんが目をつり上げて言った。

「信長様を化け物扱いするんじゃねえ!」

「人間何百年も生きられませんよ?もう死んでるに決まってるじゃないですか!」



「「「…は?」」」

武将達は眉をひそめてこちらを見た。
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