第1章 出会い
明智光秀、と目の前の人は名乗った。
その人は歴史上の信長暗殺を目論んた張本人。
(でも…)
(この人じゃないね)
私と椿はそう目で会話してから明智さんに向き直って言った。
「「何でもありません」」
すると横から豊臣さんが明智さんを睨みながら言った。
「光秀!お前が京にいるなんぞ聞いてないぞ!」
「言っていないからな」
「信長様の御身に危険があってから現れるなんぞ怪しすぎる!お前、後ろ暗いことが無いと言えるのか⁉」
豊臣さんのその台詞に明智さんは目を細めてからかうように返した。
「この戦国の世で後ろ暗いことが無い奴なぞいるのか…?」
それにすかさず豊臣さんが噛み付く。
「光秀っ!」
そこに低く重厚な声が落ちる。
「やめぬか、貴様ら」
豊臣さんはびくりとして、明智さんは少し妖しく笑って、「「申し訳ありません」」と言った。
それを横目に見ながら私は小さな声で石田さんに尋ねた。
「すみません、制服が煤だらけなので洗ってる間だけでもいいので替えの洋服を頂けませんか」
石田さんははっとしてから頷いた。
「すみません、気が至りませんでしたね」
「いえ、こちらが勝手にお願いさせていただいただけですので…」
石田さんは後ろに控えていた男の人に指示を出した。
「隣村から着るものを少し頂きましょう。代わりに良い物を差し上げてください」
「はっ」
「絢様、椿様、暫しお待ちくださいね」
「「ありがとうございます」」