第1章 出会い
「そうすぐに怒るな、秀吉」
その声の主はひらりと馬から降りると、私達が助けた黒い甲冑の人に恭しく片膝をつき、言った。
「信長様が夜襲にあったと報告があり慌てて参りましたが…」
そう言うとその人はゆらりと立ち上がる。
「何も無かったようで安心致しました」
すると信長と呼ばれた男はふんと鼻で笑って言った。
「光秀、貴様が慌てるなど戯けた事を」
「よくご存じで」
その傍らで私と椿はヒソヒソと話していた。
(信長だって…!この建物本能寺ってそこに書いてあったし、さっきの人は秀吉って言うみたいだし今の人は光秀だしこれはまさかの織田信長と豊臣秀吉、明智光秀なんじゃ)
(まさかぁ!そんなわけ…)
(だね…はは…)
(…にしても何があったの⁉)
(わかんない…。雷が落ちてきて、眩暈がして…)
(気付いたら建物の中!しかも火事だったし)
私達がヒソヒソと盛り上がっていると、上から信長と呼ばれた男の人がひとつため息をつき、私達に話しかけた。
「貴様ら」
「「は、はい」」
「俺の配下に名乗れ」
「えっ」
さっき自分で私達を紹介していた気がしなくもないんだが…。
「いや、別に自己紹介する必要ないんじゃないですか?」
するとその人は凄い威圧感を放って言った。
「俺の言うことが聞けぬと申すか」
「いや、なんで聞かなきゃいけないんですか…」
椿がそうげんなりして言い返すとさっきの美青年が言った。
「いえ、こちらから名乗るのが礼儀ですよね」
「あ、いえ」
「私は石田三成と申します。そこにいらっしゃいます豊臣秀吉様の臣下です」
「っ絢です」
「椿、と申します」
私達は立ち上がって制服についた土を払い、豊臣秀吉と石田三成という人達の方を向き軽くお辞儀をした。
「「よろしくお願いします」」
石田さんが「こちらこそよろしくお願い致しますね」と言ったのに対し豊臣さんは終始睨んできた。
「…豊臣秀吉だ。信長様を救ってくれたことには感謝するが、怪しい奴に変わりはない。妙な真似をするなよ」
「しませんって」
「できませんし」
すると白銀の髪の人がくく、と笑って言った。
「俺は明智光秀だ」
「「え」」
「どうした?」
明智さんの妖しい目に覗き込まれる。
「「い、いえ」」
(明智光秀ってたしか本能寺の変起こした人じゃ…)