第9章 褒美
部屋に帰ると緊張が解けたからか一気に疲れが押し寄せてきた。
(そういや信長様今日のこと何も言わなかったな)
へたりと座った私に絢が苦笑しながら話し掛ける。
「威厳というか…すごいよね」
「あれが天下人…」
あんな人と一日居られた絢を心から尊敬した。
「そういやなんの話したの?」
「ご褒美の話。今日も大分悪いひと捕縛できたらしいしね」
絢は戦術書を閉じて言った。
「何を貰うことにしたの?」
「剣術。教えて貰うことにした」
「ええっ」
絢は目を丸くした。
まあ当然そうなるよね。
「絢、最近けっこう戦術書読んでるでしょ?だったら剣術の方は私がと思って」
絢が剣術を習いたいと言ったのも聞いていたけど私も習ってみたかったし。
「んで私が戦術勉強するときは絢が教えてよ!」
「それがいいね!」
そのとき襖の向こうからふみさんの声がかかる。
「絢様、椿様、夕餉をお持ちいたしました」
「え」
「広間で食べるには疲れてるかなって私が頼んどいたの!どうぞー!」
そう言って絢が襖を開ける。
なんて気遣いのできる友人なんだ、と私は感激して絢に抱きつく。
「今日椿様がいらっしゃっていた甘味処のわらび餅も取り寄せておきましたから食後にお召し上がりくださいね」
「ふみさん…!」
そういや味なんて覚えてないし途中だった気もするのでこれは大変有難い。
まだ一週間も経っていないが身の回りの人に恵まれたなあ、と感謝をした。