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〈イケメン戦国〉紫陽花の咲く季節

第9章 褒美


湯殿に着いた私たちは湯殿の人払いを命じて二人でゆっくり入ることにした。

「なんかさ、申し訳ないもんね」

「わかる。自分で出来るんだもん」

体を一通り拭って(洗って)お湯にざぶりとつかる。

「今日何があったの?」

絢がおずおずと尋ねる。

「えっとね、昨日の人達の仲間に仕返しされそうになってた」

私はかいつまんで今日の出来事を説明する。

「え"」

「それでね、昨日言ってた男の人に助けてもらったの」

絢は目をきらりと輝かせて言った。

「また助けてもらったの?しかも2回ともたまたま会って?それはもう運命なんじゃない?」

「えっ」

私はその人を思い浮かべてみる。
高くはないけど低くもない、筋肉がいい感じについているすらりとした体型。
鋭いけど緑と蒼のきれいなオッドアイに金糸のようなさらりとした髪、薄いくちびる、なんだか物憂げな表情。

うーん好みだ。

(そんな人間が戦国時代にいるか考えたら負けだから考えないでおこう)

「そうなのかなぁ…」

(そうだといいな)

「きっとそうだよ!名前は教えてもらった?」

絢はうきうきしながら聞いてくる。

「…上杉謙信」

私が小さな声でぽつりと言うと絢が目を見開いた。

「え"?!……あの?」

「わかんない」

でもここは佐助さんいわくパラレルワールド。
名だたる武将が全員イケメンという可能性がなくもないということ。

つまりまあ「あの」上杉謙信でもおかしくはないということだ。

「そっかあ…」

このことは安土城の武将たちには話さない方が良いだろうということにして私たちは湯殿を後にした。
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