第9章 褒美
城に帰ってからはまあ大変だった。
ふみさんとさくらちゃんはすごく心配してたし佐助さんも政宗もその人たちに対して怒ってるのが伝わってくるし政宗の部下に至っては腹を切ると言って聞かなかった。
「椿、お風呂でも入る?」
絢はぱちりと手を叩いて言った。
一旦静かにしておいた方がいいんじゃないかと皆が出ていった部屋にそれはやけに響いた気がした。
「そうね…!私、絢に報告したいことがあるの」
「え、それは気になるなあ」
そんなことを言いながら湯浴みの仕度をして部屋を出るとふみさんが居た。
「絢様、椿様湯浴みですか?」
「うん!」
「椿は夕方に信長様に会うし私もついでにと思って」
「左様でしたか。ではこちらの香油も一緒にお持ちになってはいかがでしょうか」
ふみさんはどこか安心したように微笑んだ。
「ありがとうございます」
「いってきますねー!」
私たちは覚えたての湯殿の場所に向かって小走りをした。
──
「大丈夫そうですね」
「みたいだな」
元気に部屋から飛び出した二人を見ていた二人の男たちは安心した様子だった。
「じゃあ僕はおいとましますね」
「ああ、また来いよ」
町人のような格好をしたほうの男がそこを去った。
「誠二郎」
眼帯を着けた男が言った。
「あれはお前の責じゃねぇ。あいつらも無事だから気にするなよ」
「…はい」
青年はそう返事すると目に涙を溜めつつ恭しく礼をして去っていった。