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薔薇の花が咲く頃に【気象系BL】

第5章 chapter 5



「ところでさ、智くん…」

「……?」

智くんは、俺の問い掛けにコーヒーを飲みながら、目線だけで反応を返してきた。 その上目遣いの視線は本当に、理性を失いそうになるから控えて欲しいんだけど…。

その反面、もっと見たいと思ってしまうのだから、俺も大概だ。

ふぅっと軽く息を吐き、ずっと聞こうと思っていた質問を投げ掛けた。

「智くんは、今、付き合ってる人は…いるの?」

「…っぐふ! え、っげほ」

「あーもう、何してるのよ…」

「ご、ごめん…」

俺の投げ掛けた言葉に、びっくりしたのか動揺した智くんは、口に含んでいたコーヒーを思い切り吹き出した。

その場にあったティッシュで、コーヒー色に染まった智くんのTシャツを拭いていく。

…おかげで、ティッシュでは拭いきれそうにもないくらい、濡れてしまっているし。 そういえば、大学時代にもこんな事あったな。確かあの時は、絵の具で…。

「翔くん、もう大丈夫…ちょっと着替えてくるね」

俺がティッシュを手に、思い出に浸っていると、智くんが困ったように俺を見て、さっと立ち上がった。

「え、あ…ああ」

俺は、なんとなく智くんの躰から手を離し、歩き出した智くんの背中を目で追った。

…ちょっと痩せたかな、あの頃より。

その小さな背中を見て、心の中でそんな事を呟く。俺は、無意識のうちに立ち上がり、その背中を追って智くんの寝室へと向かった。

少し扉に隙間が出来ていたのを、自らの手で大きく開いた。 すると、中で上半身裸になった智くんが驚くように俺を見て…。

「どうしたの…? 翔くんは向こうで休んでたら良いの、に…?」

「やっぱり…まだ残ってた」

俺は、不思議そうにしながら言葉を発している智くんを遮り、その躰に触れた。

そうすれば見える、へその辺りに広がるあのタトゥー…。

――あの時と何も変わっていない、大きく黒い薔薇が智くんの躰に色濃く花を咲かせていた――。








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