第2章 「魔法省の勧誘」
イギリス魔法省の待合用の薄暗い場所で
ニュート・スキャマンダーは1人空を見つめていた。
何かが手首を引っ張っている事に気付き見下ろすと、
ボウトラックルのピケットがほつれたカフスの糸にぶら下がって揺れていた。
糸がきれボタンが廊下に転がっていくと、2人でボタンを追いかけて拾い上げると目の前に1人の女性が立っていた。
「ニュート、皆が呼んでいるわ」
「リタ……どうしてここに?」
「テセウスが、私も魔法省のファミリーになるといいって。」
「魔法省がファミリーだって、そういう言い方をしたの?」
リタは小さく笑うと、2人は廊下を歩き始めた。
「兄らしい言い方だ。」
「貴方が夕食に来て下さらないので、テセウスが嘆いたわ。
招待を全部断られたのですもの」
「ああ、忙しくて…」
「兄弟でしょう、ニュート。
彼は貴方と過ごしたいのよ…私もよ」
ニュートはピケットがコートの折り返しの襟によじ登ろうとしているのを見つけ、コートの胸ポケットを開けた。
「おいピック、入ってろ。」
「貴方はどうして変な生き物に好かれるのかしら?」
「ああ、変な生き物なんていない__「そう言う人は心が狭いだけ」
そうでしょう、というような態度でリタはニュートに言った。
「プレンダガスト先生にそう言って、居残りさせられた事があったわね。」
「あの時は確か1ヶ月も」
「私も居残りに付き合いたくて、
先生の下で糞爆弾を破裂させた。覚えてる?」
2人はお役所的で怖そうな扉が見えるところまで来ると
中から兄のテセウス・スキャマンダーが出てきた。
「いや、…覚えてない」
にべもない拒絶を受けて、リタは立ち止まった。
テセウスがニュート達の前に来てリタにウィンクをしてからニュートの方を見た。
「やぁ。」
「テセウス、ニュートに夕食に来るように誘っていたの」
「そうか?えーと…部屋に入る前に、一言…」
「テセウス、これで5回目だ。やり方は分かっている」
「今までとは違うんだ、今回は……
とにかく頑固になるな、いいか?」