第6章 「思い出したくない記憶」
クイニーがソファに掛けていた。
傍のテーブルには紅茶とケーキが置いてあり、
クイニーが空になったティーカップを置いた。
ロジエールが絶え間なく紅茶を注ぎ出すので
クイニーがやや気まずい思いをしているのが分かる。
「あ、もう結構です…とてもご親切にしていただいて。
でも、姉がきっと死ぬほど緊張して探していると思います。
あちこちの家の戸をバンバン叩いて…とか、ですからもうお暇します。」
「でも、まだ館の主人に会っていらっしゃらないわ」
「まぁ、結婚していらっしゃるの?」
「そうね……深く関わっているわ」
「あの、分からないわ。
冗談なのか、それとも貴方が…フランス流だからなのか」
ロジエールは笑い声を上げて部屋から出ていく。
クイニーは訳が分からなかった…
魔法の掛かったティーポットが宙に浮き、
ティーカップにお茶を注ぎたくてクイニーを小突いた。
「ちょっと、止めてよ。」
ドアが開くと、そこには
グリンデルバルドが現れた。
クイニーは立ち上がり、ティーカップは床に落ちて割れた
そして、彼に杖を向け呪文を唱えようとした。
「近寄らないで、貴方が誰だか知ってるわ。」
「クイニー、君を傷つけるつもりは無い。
助けたいだけだ…君は今、故郷から
離れ安らげるものから全て離れて。」
グリンデルバルドはゆっくりとクイニーに近付き、そう言うと図星だったのか彼女の瞳は見張りながら杖を握っていた。
「君が傷つくのを見たくない。
姉さんが闇祓いなのは、君のせいじゃない。
君が私と共に、新しい世界を作るようになって欲しい。
我々は魔法使いが、自由に、公然と生き、
自由に愛することの出来る世界を_____。」
グリンデルバルドがクイニーの杖の先に
触れ、杖を下ろさせる。
「君は無垢な人だ…行きたまえ、この家から出て。」
グリンデルバルドがクイニーに呟き、
彼女は涙目になりながらゆっくりと館から出ていった。