第5章 「出会ってはいけない運命」
クリーデンスとナギニは踊り場に着くと、
ドアが半開きになっており縫い物をしている女性の影が見えた。
「キエラ?(誰なの?)」
「セ ヴォトル フィス、マダム(マダム、貴方の息子さんですよ)」
ナギニがクリーデンスの手を取り、
優しく部屋の中に引き入れる。
繕いが済んで洗濯したばかりの服が
天井の棹に下がっていた。
「キエヴ?(どちら様?)」
「…貴方がアーマ?貴方は……アーマ・ドゥガードさんですか?」
「いいえ…私は召使いです。
貴方の名前が、養護縁組の書類にありました。
お分かりになりますか?貴方が私を、ニューヨークのミセス・ベアボーンに預けた。」
一枚の布をめくると、
そこにはアーマが立っていた。
見た目は小さな半妖精、半人間のような見た目で
クリーデンスは困惑し酷く失望した表情を浮かべていた。
「私は貴方のお母さんではありません。
小間使いでした…貴方は本当に綺麗な赤ちゃんでした。
今は立派な若者ですね、あそこに置いていくのは辛かった」
「どうして貴方の名前が養護縁組の書類に?」
「私が、貴方をミス・ベアボーンの所にお連れしました。
あの方が貴方の面倒を見るはずだったからです。」
その頃、壁に違和感を感じたナギニは壁に近付くと
メキメキとヒビが鳴ると…カモフラージュで完全に姿を隠していたグリムソンが姿を現し、杖を上げて死の呪文を放った。
呪文はシーツや衣類を突き抜け、燻る焦げ穴が残った____
仕留めたと確信してニヤリ笑いを浮かべながら、グリムソンは布を切り払って行くと…そこにはアーマが事切れて床に倒れていた。
天井を見上げると、オブスキュラスが黒い煙のように渦巻いていた。グリムソンは盾の呪文を放ち、自分とアーマの死体の周りをドームで囲んだ。
オブスキュラスはグリムソンに突っ込んでいき、
盾の呪文を機関銃のように攻撃を繰り返すが魔法の障壁は震えこそすれ破れない。
怒りで今や膨張したオブスキュラスは、
竜巻のように屋根裏部屋を突き破った。
グリムソンはオブスキュラスに向かってほくそ笑み、
「また会おう」と言うなり姿くらましをした_______