第1章 「グリンデルバルドの脱走」
八頭のセストラルに引かれた、霊柩車のような黒い馬車が待ち受けていた。
闇祓い1と2が御者代に上がり、他の闇祓いがグリンデルバルドを馬車に押し込んだ。
「世界中の魔法界が貴方に深く感謝します、ピッカリー議長」
「彼を侮らぬように。」
「スピールマン様、彼が隠していた杖です。」
アバナシーはスピールマンに黒い長方形の箱を渡した。
「アバナシー、例のものは?」
「これも見つけました。」
アバナシーは金色に輝く液体の入ったガラスの小瓶を手に持っていた。スピールマンが手を伸ばして取ろうとするが、鎖に繋がっていた為躊躇いながらも鎖を手放した。
小瓶がスピールマンの手に渡る時、馬車の中のグリンデルバルドが目を上げて、天井を見つめていた。
スピールマンも馬車に乗り込み、闇祓い1が手綱をとり馬車の扉が閉じるといくつもの錠前が現れガチャガチャと不吉な音をたてながら、ひとりでに錠がかかった。
「達者な舌もこれまでだな、…え?」
スピールマンが小瓶を取り上げて、鎖の先でぶらぶらさせると
グリンデルバルドの姿が変身し始めた。
馬車の底でアバナシーが車軸を握りかえ、彼の顔も変わっていく
髪がブロンドになり伸びていく…そしてニワトコの杖を上げた。
「オー!!」
スピールマンはグリンデルバルドが舌の無いアバナシーに変わった事によりショックを受けて叫んだ。
すっかり元の姿に戻ったグリンデルバルドが、馬車の底から姿くらましをし、黒い手綱を生きた蛇に変え闇祓い達を闇へと落下させた。
馬車が危険な揺れ方をして、両側の扉が開くと窓からグリンデルバルドが現れ、スピールマンは膝の上にある杖の箱を開いた。
中からチュパカブラが飛び出し、スピールマンの首に深深と牙を突き立てた。
グリンデルバルドは馬車をハドソン川に向け、箒に乗った闇祓いがおってきている事に気づいた。