第4章 「貴方に会いに」
何事も起きない…見物者はスケンダーをやじり、
ナギニは憎しみのこもった瞳でスケンダーを見つめる。
「変身して…」
スケンダーが檻の格子に鞭をくれると
ナギニは目を閉じ、ゆっくりと蛇の姿に変貌していった。
「やがてこの娘は元に戻れなくなる、蛇の体に一生囚われるのだ」
突然ナギニが、檻の格子を通してスケンダーを襲い
スケンダーは血を流しながら、くしゃくしゃになって倒れる。
テントの奥では、クリーデンスが火竜の檻を叩き壊すと
自由になった火竜は花火のように舞い上がる。
大テントに火がつき____パニック状態の見物者達は悲鳴をあげながら出口に殺到し、折り重なって倒れる。
ティナとコウヒは姿くらましして、杖の一振りで火を消すと
ズーウーの檻に火がつきガタガタと危険な揺れ方をし始める。
檻の中のズーウーが吠え猛ると檻を突き破って
飛び出し、他の動物達同様恐怖に駆られて狂暴になっている。
「クリーデンス!」
「荷物をまとめろ、パリとはもうおさらばだ」
スケンダーが杖をテントに向け、
ハンカチぐらいの大きさに縮めてポケットに入れる。
「マレディクタスと一緒に居た青年の事、何か知ってますか?」
「あいつは母親を探している。
サーカスの半端な奴らは皆、家に帰られると思ってやがる。」
さぁ、行くぞ。とスケンダーが言うと馬車は
魔法でほんの数個に収まった檻や箱を乗せて、ガタゴトと夜に消えていった。
ティナは一瞬、誰も居ない広場に一人取り残されたかに見えたが
気が付くとカーマが後ろに立っている。
「もしかして、貴方方もあのサーカスに居た青年をおっておりましたか?」
「えぇ、そうよ…もしかして貴方も?」
「詳しい事は、お茶を飲みながらゆっくり話しましょう。」
彼はそう言うと、姿くらましをしてその場から消えた。
ティナとコウヒも後を追うかのようにサーカスのあった屋外から姿を消した________