第4章 悪魔と、死神と、切り裂きジャック
いいも悪いもあるわけない。マリアンヌはこの事件の真相が知りたいと思った事を盛大に後悔をした。
切り裂きジャック事件の正体は、愚かで身勝手な人間同士の極めて身勝手な最低の行為、それはただイタズラに自分の過去の傷をほじくり返しただけだったのだ。
「(き…切り裂きジャック事件は、誰もが被害者の様に見せかけてますが、違いました……誰もが加害者です!!簡単に人を傷つけ殺す、最低な加害者です!!私は昔から…今だって大嫌い…よ……人なんて……人間なんて大嫌いです!!)」
完全に負の感情に支配されてしまったマリアンヌは、アンダーテイカーの胸元をドンドンと叩きながら泣き叫んだ。
──人間なんて大嫌い──
「そうかい…それじゃあ帰るとしようか。」
その言葉にニヤリと満足した表情を見せると、アンダーテイカーは背中から卒塔婆をだし、大鎌のデスサイズに変えると、マリアンヌを抱きしめ店まで戻してやった。
「ほら、着いたよお姫様。」
少し雨が降ったが、ケープの下は濡れていなさそうだ。アンダーテイカーはしゃくりあげて泣いているマリアンヌにかわって、首元の紐をといてケープを脱がしてやった、のだが……
──ドンッ!──
「!?」
不意をつかれマリアンヌに突き飛ばされたアンダーテイカーは、店に無造作に置かれてある棺の1つに尻もちをついてしまった。
マリアンヌにこんな力があったのかと思わず驚く。
「マリアンヌ…?どうしたんだい?」
両手をついて脚を組みながらマリアンヌに問いかけたが、マリアンヌは質問に答えようとせずアンダーテイカーの膝に跨るとそのままかたい棺に押し倒してしまった。
アンダーテイカー愛用の黒い帽子が床に落ち、長い銀髪もパラパラと散らばる。
しかしマリアンヌはそんな事に構うことなく、自分の中の何かを追い払うかのようにブンブンと首を振ると、今度はアンダーテイカーの服に手をかけストールを剥ぎ取り乱暴に服のホックを外し始めた。