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君は小生の宝物/葬儀屋/黒執事

第4章 悪魔と、死神と、切り裂きジャック




フラッシュバックした記憶に全身を支配されてしまったマリアンヌはかたく目を瞑りうずくまるが、どれだけかたく目を閉じようとも、その忌まわしい記憶は無慈悲にも過去の映像を瞼の裏に映し出した。



──ナンデウマレテキタノヨ──


──サッサトドッカニヤッテヨ──


──キミホントウニシャベレナイノ──


──タメシテミヨウカ…──


──コッチニオイデ──


──カワイイネ──




今度は聞こえもしない声が直接頭に響き渡る。



「(やめて……やめてやめて…!)」



耳を塞げば次はここにあるはずもない匂いが嗅覚を刺激する…


時間のたった血液の匂い、汚い男達の精液の匂い、錆びた鉄の匂い……


条件反射の様に鼻と口を塞いでブンブンと頭を振ると、よく知る人物の声が聞こえてきた。



「マリアンヌ…?大丈夫かい?」



優しい口元のアンダーテイカーに声をかけられハッと我に返る。



「(あ…あ…アンダーテイカーさ…ん…)」



フラッシュバックした記憶に一瞬自身を支配されてしまったようだが、シエルは無事なのか?


脂汗をかきながらパッとシエルの方に目を向けると、ナイフを下にさげて涙を流すマダムの姿が目に入った。
思いとどまってくれたのだろうか?



しかし、その時だった。









「ガッカリよ!!マダム・レッド!!」





──ドンッ──





「(マダム!!)」





シエルを手にかけることに一瞬の迷いを見せたマダム・レッドの胸にグレルのデスサイズが容赦無く突き刺さり、その身体をいとも軽々と放り投げた。




「ただの女になったアンタに、興味ないわ!!」




マダム・レッドの身体はゆっくりと弓なりに浮き上がり、その胸元から溢れ出る血飛沫は、美しい満月に向かって降り注いでいるかのような錯覚に陥るほどスローモーションに見えた。



そして血飛沫に混じり飛び出す無数の黒い帯状の影…

あれはいったい何なのだろうか。














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