第4章 悪魔と、死神と、切り裂きジャック
「アタシは追われるより追うほうが好きよ、セバスちゃん!素敵な鬼ごっこしましょ!!」
「気持ち悪い事を言わないで下さいと…申し上げたはずです が !!」
「見かけによらずパワフルなのねセバスちゃん♡だけど…ココからが本番!!」
グレルはなんとも気色の悪い解釈をしながらはしゃぐ様にセバスチャンとの戦闘を楽しんでいる。
その生理的に受け付ける事ができないテンションにセバスチャンは若干押され気味だ。
「マダム!!医者である貴方が、何故人を……」
「あんたみたいなガキに言ったってわかりゃしないわ!!一生ね!!」
「(あ……あ……ダ、ダメよ…)」
シエルの方を見れば、怒気を上げたマダムが胸ぐらを掴んで力任せに壁に打ち付けている。
「………ぐっ…!」
真実が分からぬまま混乱するマリアンヌをよそに、事態はどんどんまずい方向に向かっていってしまう。
そしてマダム・レッドは鋭い眼光でシエルを睨みつけながら思い切りナイフを振り上げた叫んだ。
「あんたなんか…あんたなんか!!産まれてこなければよかったのよ!!!」
「(!!!!!)」
──アンタナンカ…ウマレテコナケレバ…──
──アンタナンカ…ウマレテコナケレバ…──
ズキン!!!
「(あうぅ……!!)」
マリアンヌは突然目眩と背中の痛みに襲われその場で頭を抱えながらうずくまってしまった。
──アンタナンカ…ウマレテコナケレバ…──
「(や、やめて……)」
──アンタナンカ──
──アンタナンカ──
「(や、やめてぇぇー!!)」
長い長い、長い時間をかけてやっと脳内の片隅まで追いやることのできた忌まわしいマリアンヌの記憶。記憶の片隅に、ぎゅうぎゅうに押し込み、何重にもカギをかけておいたはずの箱。
それがマダムの叫んだ一言によって暴れだすと、それはマリアンヌの負の感情をエネルギーに膨張してしまい、あっけなく破裂してしまった。
その破裂し飛び散った記憶の飛沫はマリアンヌの神経を容赦なく刺激し、血液をめぐり、一瞬にして全身を支配した。