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君は小生の宝物/葬儀屋/黒執事

第1章 甘くて激しいバレンタイン♪


程なくして馬車はシエルの屋敷に到着した。
毎度感じている事だが、この豪華なお屋敷には軽く目眩を起こしてしまう。

伯爵という爵位を持つシエルと比べるなどおかしな話であるが、自分の住んでいる自宅兼店とは雲泥の差だ。


立派な玄関をあけると、主人の帰りを待ちわびていたメイリンが出迎える。タウンハウスに使用人も一緒ということは今回の滞在は長いのだろうか?

以前セバスチャンは、本邸を長く不在にすると、屋敷をボロボロにされてしまうから、長期不在にする時は使用人も連れてくることにしていると軽くボヤいていたのをマリアンヌは思い出した。


「坊っちゃん、セバスチャンさん!お帰りなさいませ。あっ、マリアンヌさんもご一緒ですだか?」

大きな眼鏡をかけたメイリンがマリアンヌにも声をかけた。

「葬儀屋さんは一緒ではないですだか?」

以前に数回、シエルの屋敷に来たことはあったが、いつもアンダーテイカーと一緒だった為、メイリンの問いかけももっともだった。

「メイリン、私はマリアンヌさんに持たせたいものを用意しますので、応接室までご案内お願いします。」

「はいですだ!」

セバスチャンはメイリンに応接室までの案内を言いつけると、足早にキッチンへと向かっていった。


応接室のソファに案内され、腰掛けるとメイリンはマリアンヌのコートを受け取りハンガーにかける。

「すぐに坊っちゃん来るですだ。少しお待ち下さい。」


メイリンがでていくと、広い応接室にはマリアンヌ1人だ。立派なソファに座りながら天井に吊るされてる豪華な照明を見上げると、考えるのはアンダーテイカーのことだ。

「(いいつけを破ってしまった…アンダーテイカーさん…怒るかな…)」

彼を想っての結果ではあるが、いいつけを破ったことには変わらない。
1人なったマリアンヌの胸は不安でいっぱいになってしまった。


──カチャ──


程なくしてシエルが入ってきた。

何故だが上座ではなく自分の横に座り脚を組む。
その距離は限りなくゼロに近い。


「そういえば、お前が1人で来るのは初めてだったな…マリアンヌはあの気色の悪い葬儀屋のどこがそんなに好きなんだ…」

「(えぇ?!)」

確かに死体をイジるのが趣味だし、欲しがる報酬は極上の笑いだし、好物は骨型のクッキーにヌルい紅茶だ。
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