• テキストサイズ

君は小生の宝物/葬儀屋/黒執事

第1章 甘くて激しいバレンタイン♪


アンダーテイカーは見た目に似合わず甘い物が好きなため、マリアンヌは手作りのガトーショコラを作ろうと計画を立てていたのだ。
必要な物をメモに書き、買い物カゴに入れると、マリアンヌは買い出しに行くための準備を始めた。
ウール素材で仕立てられたケープ付きのコートを着ると、財布の中身を確認し、店の戸締まりをする。

店の扉にかかっているプレートを「CLOSE」にひっくり返せば準備完了だ。

マリアンヌは近くの商店街まで小走りで向かっていった。

小麦粉や卵、砂糖などは、自宅兼店のキッチンにも常備してあるが、チョコレートや生クリーム、バターなどは買いに行かなければならない。

その上、ケーキの型など、普段使わない調理器具も必要なため、買い出しには少し時間がかかりそうだった。さて、何から買いに行こうかとメモを取り見つめていると、マリアンヌの横に上等な馬車が止まった。

一瞬何事かと驚き馬車を見ると、開かれた小窓からはよく知る人物の顔だった。

ファントムファイヴ邸の当主、シエル・ファントムファイヴ伯爵とその執事、セバスチャン・ミカエリスだ。本邸はロンドンの郊外だが、様子から察するに仕事でこの近くのタウンハウスに滞在していたのだろう。

この2人は葬儀屋の主、アンダーテイカーに裏社会の情報を求めて時折店にやってくるお客でもある。

「マリアンヌ1人か?アンダーテイカーは一緒ではないのか?」

少し気怠そうな空気をまといながら声をかけたのはシエルの方だった。

マリアンヌはコートのポッケから急いでメモとペンを出すと、スラスラと事情を書き綴った。


──アンダーテイカーさんは今日、1人で仕事に行かれました。私は…買い出しです──


「こんな寒い中何を買いに行くんだ…偶然にも僕は仕事明けで屋敷に帰るところだ。手伝ってやるから買う物を教えろ。」

マリアンヌの顔はギョッと驚いた表情に変わる。
いくら仕事帰りとはいえ伯爵にこんな個人的な買い物の手伝いをさせるわけにはいかない。

慌てた様子で手を前に出しブンブン振るが、気づけば馬車から降りてきたセバスチャンがマリアンヌの買い物カゴからメモをスッと取り出してしまう。
買い物リストを見られてしまった。

そしてセバスチャンはリストにサラッと目を通すと、そのメモを小窓から顔を出しているシエルに渡してしまった。
/ 366ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp