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君は小生の宝物/葬儀屋/黒執事

第1章 甘くて激しいバレンタイン♪


店の扉を上げると、ちょうど馬車が到着していた。

マリアンヌは健気にアンダーテイカーを見送ろうと、寒い中上着も着ずに出てきた。

「今日は小生1人で大丈夫そうだから留守番を頼むよ。夕方には帰ってくるからね〜」

そう言うとアンダーテイカーはマリアンヌの頬を両手で包み、深い口づけをした。

「(んん……)」

「くれぐれも浮気はしないでおくれよ〜」

前髪の隙間から黄緑の瞳がマリアンヌを見つめた。

浮気など……浮気などするわけがないのに。

「(そんなこといたしません!)」

アンダーテイカーの手のひらに指で書くと、満足そうな笑みを見せた。

「ゴホッ、ゴホン!」

ガッ、ガッ、ガッ

そんなやり取りをしていたら御者から睨まれてしまった。馬車に繋がれた馬も早く乗れと言わんばかりに、イライラと前掻きをしている。
マリアンヌは途端に恥ずかしくなってしまったが、アンダーテイカーはお構いなしだ。

マリアンヌの方をみながら手を振ると、馬車はアンダーテイカーを乗せて行ってしまった。




葬儀屋と聞けば、葬儀の依頼がなければ一見暇そうだが、ここの店は色々と事情が違うようだ。

一般的な葬儀を扱ってはいるが、その他にもアンダーテイカーは死体をイジる趣味が興じて、検死の依頼を受けることが多々あった。
依頼主は闇からヤードまで様々だ。

また、裏社会の情報屋としても客が後を絶たない。

妖しくも美しい黄緑の燐光を放つ瞳の正体を知ってる者がいったいどれだけいるだろうか。

しかし、アンダーテイカーの正体を全て知っているマリアンヌにとってはそんな事はどうでもいいことだった。


そういえば今日は夕方に戻るとだけ言っていたが、どこまで行って何の仕事をするのか聞かされていなかった。
アンダーテイカーはマリアンヌを仕事に同行させる時もあるが、留守番させる時もある。
留守番の時はだいたい行き先など言っていくのだが、今日は何も告げずにでかけてしまった。

少し珍しいなと思ったが、マリアンヌも今日はアンダーテイカーに内緒でやりたいことがあったため、留守番で好都合だった。


マリアンヌはカレンダーを見てニコリと笑う。

今日は2月14日。

恋人達の大イベント、バレンタインデーだ。





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