第1章 甘くて激しいバレンタイン♪
寝室に戻ると、マリアンヌは下着をつけて毛布にくるまりながらアンダーテイカーが戻ってくるのを待っていた。
「お待たせマリアンヌ〜、今日はこれを着ておくれ。」
アンダーテイカーが持ってきたのはベルベット生地の膝丈ワンピース、ガータータイツ、レースとリボンの付いた小さめのトーク帽、編上げのショートブーツだった。
ワンピースの襟元、袖口、裾には繊細な模様の豪華なレースが付いており、とても上等な仕立てである。
黒一色だが、色白で目鼻立ちのはっきりしたマリアンヌにはとてもよく映える。
「良く似合ってるよ〜ニナの服は最高だね〜!」
そう、衣装部屋にある服や装飾品はすべてニナ・ホプキンスの仕立てたものだった。
着替えが終わると、厚手の遮光カーテンをあけ、日の光を入れてから、部屋の隅にあるドレッサーにマリアンヌを座らせた。
「今日はどうしようかな〜♪」
右に左に首を傾げながら、マリアンヌの腰まである長いダークブロンドの髪にクシを入れて、髪を結い始めた。
アンダーテイカーは意外にも手先が器用で、毎朝マリアンヌの長い髪を結ってやっている。
縦巻きや、アップ、編み込みなどもおてのものだ。
今日のマリアンヌはハーフツイン。トーク帽をピンでとめると、アンダーテイカーは軽く顔におしろいをはたいた。
「は〜い、出来上がり〜♪マリアンヌは可愛いから、ほとんどお化粧は必要ないね〜」
化粧箱には紅やチークなども入っているが、ほとんど出番はなく、しまわれたままだった。
毎朝、人形の様に服を着せられ髪を結われるが、マリアンヌは決して嫌ではなかった。
ニナの仕立てる服はとてもお洒落だし、髪は自分ではうまく結えないので、毎日違う髪型を結ってくれるアンダーテイカーには感心をしていた。
今日も可愛く仕上がった髪型を鏡で確認していると、間もなく馬車が到着する時刻になっていた。
それに気づいたマリアンヌは、アンダーテイカーの服をひっぱり、時計を指差す。
「もうこんな時間か〜。朝食を食べてる時間は無さそうだね〜小生はこのまま出掛けるとするよ〜」
そう言うと、寝室からでて、店の方までスタスタと行ってしまった。