第3章 「DNH企画」死神とハニーソルト
「(フフ、ニナさん、私はアンダーテイカーさんが、側にいてくれさえすればそれでいいんです。それ以外何も望みはありませんから……)」
「マリアンヌ…」
はにかむ様な笑顔からは微かに憂いが帯びていて、自分には語られる事のない壮絶な過去を抱えてることが容易に想像できる。
考えたくはないが、その過去の窮地を救ったのがあの葬儀屋なのだろう。
初めてこの店に来た時、マリアンヌは無表情な等身大ドールの様にあの葬儀屋に抱かれながら入ってきた。
一瞬本当に愛玩人形を抱いて入ってきたと思ってしまったニナは、この葬儀屋もとうとう頭がいかれたのかと思ってしまった程だった。
感情が欠落し、痩せ細り、目を背けたくなるような痛々しい身体をしたマリアンヌに、とても事情など聞くことなどできず、傷に触れぬよう採寸をした。
しかしニナがデザイン画を見せ、仮縫いで仕立てて見せると、微かに女の子らしい笑顔をしたのを今でも鮮明に覚えている。
その後は、自分の服が気に入ってくれたのか、マリアンヌとうちとけるまでに時間はかからなかった。
マリアンヌは言葉が話せなくても、よく笑いよく喋る。
筆談ではあるが、ニコニコとなんでも話してくれるようになった。
マリアンヌは見る限り、話せない以外にはどこにでもいる年頃の女の子だ。
しかし…いつだってマリアンヌの目にはあの葬儀屋しか映っていない。
いや、マリアンヌ自身が葬儀屋以外見ようとしていないのだ。
何があったのかなんてわからぬが、マリアンヌが笑顔になってくれるのなら、自分はマリアンヌが笑顔になってくれる服を全力で仕立ててやることくらいしかできない。
ニナは採寸を手早く済ませると、マリアンヌの希望の色を聞き、様々なデザイン画を見せてやった。
「(わぁ!ニナさん!どれも素敵です!!仕上がりが楽しみです!)」
「嬉しいわ♡急いで作るから、出来上がったらすぐに連絡するわね♡」