第10章 その死神、激情
粗相…
したと言えばしたが…
最後まで致してないので、してないとも言える。
また、パン屋で起こった真実が偽りなくアンダーテイカーに伝われば穏便に済みそうな気はするが、彼が聞く耳を持たぬままマリアンヌを攻め続ければ厄介な事になりそうだ。
「申し訳ございませんが、その件に関しては葬儀屋さん次第の様な気がします。」
「はぁ?なんだそれはいったい…情報量の値上げだけは絶対に勘弁だからな!!」
「それは善処致します。」
セバスチャンの返事を聞いたシエルは舌打ちをすると、つかつかと書斎まで戻っていった。
ーバタンッー
デスサイズのひとふりで店まで戻ってきたアンダーテイカーはそのまま廊下に続く扉を乱暴に開けると一目散に寝室まで向かう。
ーバサッー
そして寝室にたどり着くと、アンダーテイカーは持っていたマリアンヌのコートを投げ捨て、肩に乗っていたビャクも振り払うように廊下へ放り出してしまった。
『クルルル!!』
真実を知っているビャクは、マリアンヌだけのせいではないと、なんとか伝えたかったのだが、完全に頭に血が昇ったアンダーテイカーは、ビャクの主張に耳をかさなかった。
「ビャクには関係ない、黙ってろ…」
そう言うと、寝室の扉は無慈悲に閉められてしまった。
ードサッー
アンダーテイカーは服が乱れたままのマリアンヌをうつ伏せになる様に押し倒すと、その横に膝をつき首の後ろを掴んだ。
「何故だマリアンヌ!何故小生を裏切った…」
そしてそのまま力いっぱい首を押し付ければ、マリアンヌは顔を枕に埋めた状態で動けなくなってしまう。
「(んん…!!んん…!)」
「いつからだ、マリアンヌはいつからあの害獣に心変わりしたんだ、小生には聞く権利がある。」
「(いや……いやぁ……苦しい…!)」
息ができないわけではなかったが、枕に押し付けられた状態ではどうしても息苦しくなり、マリアンヌは軽く酸欠状態になってしまった。