第10章 その死神、激情
マリアンヌは意識が朦朧とする中、自分の意思とは反対に獣の様に疼きだした身体が勝手に暴れ、無意識だが激しくアンダーテイカーを欲しがっていた。
そして望むがままに愛撫をされ、燻り続けていた欲望が爆発する様に発散されると、モヤがかっていた意識が少しずつ澄んできたが、そこでなんだかいつもと様子が違う事に気づく。
「(……あ、あれ…わ…たし……)」
なんだか記憶が曖昧だ。
しかし、今自分は誰かの首元に腕を絡ませ抱きついている。
マリアンヌはその人物がアンダーテイカーであると思い込んでいたのだが、何となく“違和感”を感じ胸がざわついた。
まわしてる腕にいつも感じる長い銀髪の感触が無い。
それに衣服の感触も、いつもアンダーテイカーが着ているローブの布地と違うような気がする。
何かがおかしいと思うが、まだ頭の中はスッキリせず意識を混濁させている。
今のこの状況を必死に確かめようとしてると、マリアンヌの耳元で、誰かが囁いた。
「マリアンヌさん、そろそろ私も愉しませて貰っても宜しいでしょうか?」
「!?」
アンダーテイカーではない声にピクリと反応する。
まさかの事態に頭はパニック状態だ。
しかし、次の瞬間無理やり扉をこじ開ける音が部屋に鳴り響き、マリアンヌは条件反射でそちらに視線だけを向けた。
「見つけた…執事君?小生の宝物に何をしていたんだい?」
「(…え…?!どういうこと…?)」
その開け放たれた扉に立っていたのは、マリアンヌが心から愛しく想うアンダーテイカーの姿だった。
何故…
何故アンダーテイカーは離れた扉の方にいるのだ。
今の今まで自分の欲望を叶えてくれていた筈ではなかったのか…。
コツコツとブーツの踵を鳴らしながらこちらに近づいてくると、アンダーテイカーは今しがたマリアンヌが腕を絡ませていた人物の胸ぐらを思い切り締め上げた。
その締め上げられている人物を恐る恐る見上げると、それはまさかのセバスチャン。
そしてこの部屋はいつもアンダーテイカーと眠っている寝室ではないことに気づく。
「(どうして……)」
マリアンヌは自身に起こっている事が全くもって理解できなかった。