第10章 その死神、激情
「マリアンヌ…」
薄暗いベッドの上で横になっているマリアンヌは、組み敷いているセバスチャンの首の後に腕を絡めてしっかりと抱きついている。
そして、スカートの裾は腹部まで捲れ上がっていて、ガータータイツを履いた細くて美しい脚があらわになっているではないか。
この2人は…いや、マリアンヌはいったいここで何をしていたのだ。
捲れ上がったスカートの裾からあらわになっている脚は厭らしく開いており、下着もズレている。
そしてふとアンダーテイカーがベッドの下を見ると白い手ぶくろが目に入った。
ここまで見てしまえば、今まで何をしていて、これから何をしようとしてたかなど、容易に想像ができてしまう。
「マリアンヌ……」
このベッドの上に重なる2人を見たアンダーテイカーは、自身の中の感情をつかさどる大事な機能が音を立てて壊れていく様な感覚を覚えた。
ーガシッー
この害獣め……
アンダーテイカーは勢いよくセバスチャンの胸ぐらを掴む。
「…クッ、いったいどうされましたか?」
あくまで余裕の態度を崩さないセバスチャンにアンダーテイカーの怒りはさらに熱を上げる。
できる事ならこの場でデスサイズを出し、なぶり殺しにしてやりたいが、今ここで自身の正体をバラすわけにはいかない。それに、マリアンヌの事だって無視できない。
あれだけきつく言っていたのだ。
伯爵の屋敷に1人で行くな、と。
それに、この害獣の正体も知っている筈だ。
なのにどうして自分の言いつけを破った。
アンダーテイカーは締め上げていた手を離すと今度は鋭い視線でマリアンヌを見た。
「マリアンヌ…何故ここにいる?小生の言いつけを忘れたとは言わせないよ?」
だがマリアンヌはアンダーテイカーと同じく驚愕の表情をしており、カタカタと口元を震わせながら何も言おうとはしなかった。