第10章 その死神、激情
何かに取り憑かれた様にアンダーテイカーを欲していたマリアンヌだったが、爆発するかの如くその欲望が発散されると、少しずつまわりの様子が見えてきた。
「(はぁ…はぁ…えと…わたし……)」
セバスチャンの首に腕を絡ませたまま、まだボンヤリとモヤががっている頭でアレコレと考えるマリアンヌ。
「マリアンヌさん、そろそろ私も愉しませて貰っても宜しいでしょうか?」
「(……え?)」
アンダーテイカーではない声に身体がピクリと反応する。
しかし、セバスチャンがマリアンヌの返事をまたずに下着をおろそうと手をかけてしまうが、その時だった。
ーガチャンッ!!ー
大きな音を立てて扉が開いた。
「!!??」
カギは内側からかけたはず。
この扉のカギもセバスチャンが管理しているため、誰もあけられる筈などない。
誰だ……
セバスチャンが開け放たれた扉を見ると、どうやら力任せに開きカギを壊した様だ。
こんなマネができるのはWチャールズの2人くらいだと思っていたが、今ここにいる人物はその2人ではなさそうだ。
「貴方は……」
そこにいた人物。
「見つけた…執事君?小生の宝物に何をしていたんだい?」
「葬儀屋さん…」
そう、そこにいたのは葬儀屋アンダーテイカーだった。
何故ここが分かったのか疑問に思ったが、よくよく見ると、アンダーテイカーの肩には1羽の鳩がとまっている。
あの変わった模様はあの時馬車の窓から出ていった鳩と同じだ。どうやらこの鳩は2人がここ最近飼い始めた鳩だったのだろう。
兎にも角にもお迎えが来てしまったのなら仕方がない。今していた事はうまく取り繕っておとなしく帰って貰わなければ、主人の命令に背くことになってしまう。
セバスチャンの本音はマリアンヌともっと愉しみたかったのだが主人の命令が絶対だ。
「おやおや、誰かと思えば葬儀屋さんでしたか、お出迎えに出れず申し訳ありませんてした。」
アンダーテイカーは余裕綽々と応対するセバスチャンに苛々しながら部屋に入っていくと、カーテンの閉まった薄暗い部屋から2人の姿がはっきりと見えてきた。
「…マリアンヌ…?!」
しかしベッドの上にいた2人の姿に、アンダーテイカーは思わず驚愕してしまった。