第10章 その死神、激情
「それはそれは…可哀想に。そういう事でしたら私が手助けをして差し上げますよ。」
もっともらしい甘言(ことば)を使って獲物を惑わし闇へと引きずり込むのは悪魔の常套句だ。
「(あ…あぁ…アンダーテイカーさん…早く…)」
セバスチャンはマリアンヌの着ているコートを脱がせると胸元のボタンを外してはだけさせる。
すると、薄っすらとピンク色に染まった肌が少し汗ばんでいた。
暖炉に火はついているが、この広い客室では少し寒さが残る。
それでも汗をかいているということは薬酒によって、血液の巡りが良くなり身体が熱くなっているという証拠だ。
この状態で身体が疼けば、その蠢く欲望を発散させてやらなければ正気には戻らないだろう。
セバスチャンはベッドに上がりマリアンヌを自身の下に組み敷くと、ダークブロンドの髪を梳きながらその細い首筋に舌を這わせた。
それは主人とのお仕着せというルールの中に隠した獣の顔を気取られぬ様に…
巧みに
密やかに
でも大胆に…
「(あ、あぁん…!ん、んん……)」
マリアンヌはアンダーテイカーとの日々の交わりで、全身の殆どが敏感に感じる性感帯となってしまっている。
そんな身体で今は薬酒に酔い、精力成分が強く作用してしまっている状態だ。
もう何処に触れられても異常なまでに勝手に身体が反応してしまう。
「(あぁ……ふぅ…!んん……)」
セバスチャンの舌と唇が首筋に、鎖骨に、胸元に落ちてくる。
「(あぁん…きもち…いい…もっと…もっと…)」
本能のままに欲しがるマリアンヌにつられてセバスチャンはついきつく吸い付いてしまいそうになるが、すんでの所で主人のいいつけを思い出す。
「嗚呼、葬儀屋さんにバレてはイケないんでしたね…跡をつけるのはやめておきましょう。」
跡をつけるのをやめたセバスチャンはその代わりにマリアンヌが敏感に反応する部分を探り、隅々までなぶる様に愛撫をした。
セバスチャンの執拗なまでの愛撫に身を任せていると、その快感は全身を巡り、ある一点に集中してしまう。
集中した熱はマリアンヌの最奥を刺激すると、その刺激に逆らう事なく実に素直に女の部分を潤わせ始めた。