第10章 その死神、激情
「(あの…それはいったい?)」
店主はその茶色い瓶をユラユラと揺らしながら中に入っている液体をマリアンヌに見せた。
「コレかい?これは俺がオリジナルで熟成させている滋養強壮の薬酒だ。疲れた身体でもこれを飲めばたちどころに元気回復だぜ!どうだい?飲んでかないかい?」
オリジナル熟成…見るからに怪しそうな代物だが、滋養強壮なら身体に毒になるようなモノではないだろう。帰ったら夕飯の支度をしなければならないし、できたら少し掃除もしたい。
「(で、ではお言葉に甘えて…少しだけ…)」
マリアンヌは思い切ってその薬酒を飲んでみることにした。
「はいよ!ちょっと待ってな!」
マリアンヌの返事を聞くと、店主は大張り切りで準備を始めた。
「ほらよ!」
ショットグラスの様な小さめのグラスに注がれた液体は少しとろみががった茶色い色をしていた。
「(……………)」
いかにも不味そうだ。無意識にマリアンヌの顔が引きつってしまう。
しかし、昔から「良薬口に苦し」と言うではないか。
マリアンヌはグラスをグッと握り覚悟を決めた。
「それにはよ〜、俺が厳選に厳選したにんにくに、唐辛子に、大豆にうなぎに、レバーやアボカドなんかが漬けてあってな…」
店主はあれこれと自慢の薬酒について語り始めるが、マリアンヌの耳には入っていなかったようだ。
グラスをグッと握ると目を瞑り、クイッと一口で全てを煽ってしまった。
ーカンッー
「…とまぁ、そんなところだ。アルコール度数も高いからそこに座ってチビチビ飲んでいきな…って、えーーーーーーー!!!!」
勢いよくグラスを置く乾いた音が店内に響く。
そして一気に飲み干してしまったマリアンヌに店主は驚愕の表情だ。
「ちょっと!マリアンヌちゃん!一気に飲んじゃったの?!」
「(ゔ…何コレ……)」
喉と食道に灼けるような感覚が走り、マリアンヌの視界はグラリと歪んだ。
「これはアルコール度数強いから一気飲みしちゃったらマズいよ〜!!」
すすめたのは自分であるというのに、フラつきだしたマリアンヌに店主タジタジだ。