第9章 フタリノキモチ
その心地よい感触に自然と目が開くと、目の前にいたのは少し心配そうに自身の顔を覗き込むアンダーテイカー。
「ごめんよ…起こしちゃったかい?」
前髪の隙間から見えるアンダーテイカーの瞳は、少し申し訳なさそうにマリアンヌを見つめた。
マリアンヌは少し前には目覚めていたため、首を横にふった。
やっと目を開ける事ができると、カーテンの隙間から入り込む光は夕暮れのオレンジ色だった。昼過ぎから夕方まで眠っていたようだ。
でも身体が酷く怠い。
「熱、上がってしまったかな?」
アンダーテイカーが体温計をマリアンヌの口に入れると、イスを持ってきてベッドの横に腰かける。
少し時間を置き、体温計を取り出し確認するとアンダーテイカーはそっとサイドテーブルに置いた。
「だいぶ熱が上がっているね…水は飲めるかい?」
本当は何も口にしたくはなかったが、汗もかいているし、少し飲んでおいた方がいいのだろう。
マリアンヌはコクリと頷いた。
「ほら、起きてごらん?」
アンダーテイカーに抱き起こしてもらうが、座ってるだけなのに頭がグラついた。
本当に熱が上がってるんだと実感する。
「ほら、一口でもいいから飲んだ方がいい。」
アンダーテイカーは持ってきた水差しでグラスに水を注ぐとマリアンヌに差し出した。
「(………………)」
差し出された水を口に含むが、飲み込む動作1つでさえうまくできない。
こんなにも動けなくなってしまう事など初めてだったマリアンヌは、元の元気な身体に戻れるのか本気で心配になってきてしまった。
グラスに半分程水を残した状態でサイドテーブルに戻すと、アンダーテイカーが椅子から立ち上がった。
「マリアンヌ、身体辛いだろ?薬を飲んでみよう。持ってくるから少し待っていておくれ。」
「(……あ……待って……)」
優しい笑顔を向けてマリアンヌの頭を数回撫でると、部屋を出ていこうとするが、後から服を掴まれてしまい、アンダーテイカーは少しフラついてしまった。