第9章 フタリノキモチ
「おまたせ〜」
アンダーテイカーが、体温計を持ってくるとポイッと口の中に突っ込んだ。
「(…………ん)」
「おやおや…」
口に入った体温計の示す値がどんどんと上がっていく。
「う〜ん、38,2度か…咳も鼻水もないし…少し仕事で疲れさせてしまったかな?気づかなくてごめんよ…」
「(そ、そんなこと…)」
アンダーテイカーが心配そうにマリアンヌの頭を撫でた。どうやら自分が仕事の手伝いをさせすぎたと思ったらしい。
しかし、マリアンヌには自分が熱を出した理由に心当たりがあった。
そう、ここ最近アンダーテイカーの事を考えてばっかりでずっと寝不足だったのだ。
なかなか寝付けなかった上に、一晩中浅い眠りだ。そしてその極度の寝不足状態の上に、あれこれとせわしなく仕事をしていたのだ。
疲労が溜まって熱の1つや2つ出してもおかしくない。
決してアンダーテイカーのせいではないのだが、正直に本当の理由を話すのも恥ずかしい。
だからといってこのままアンダーテイカーのせいにしてしまうのも申し訳ない。
マリアンヌはただ曖昧に首を振ることしかできなかった。
「熱があるんじゃ食欲もないだろう。マリアンヌ、今日はもう何もしなくていいからベッドで寝てるといい。」
「(す…すみません……)」
「マリアンヌが謝ることないさ。ほら、立てるかい?部屋まで送ってあげよう。」
アンダーテイカーはマリアンヌの手を取ると、キッチンを後にした。
「ほら、横におなり。」
部屋に着き、ベッドを整えるとアンダーテイカーは横になったマリアンヌに布団をかけてやった。
「大丈夫かい?ひと眠りしても熱が引かないようなら薬を飲もう。」
マリアンヌは力なく頷くと、そっと目を閉じた。
「小生は店に出てるから、何かあったら呼んでおくれ。」
ヒンヤリと冷たい手でマリアンヌの頬を撫でると、アンダーテイカーは部屋から出ていった。
実際に体温計で熱があると分かると、なんだか余計に怠くなってくるから不思議だ。
ここ最近はまともに眠れなかったが、熱で思考回路が鈍れば自然とアンダーテイカーの事を考えずに深い眠りにつけそうだ。
マリアンヌは気怠い体調に身を任せながら眠りについた。