第9章 フタリノキモチ
「(……ん、……朝??)」
アンダーテイカーへの気持ちを自覚してからしばらくたつが、マリアンヌの気持ちは変わることなく、その想いを大事に胸の中にしまっていた。
しかし、夜ベッドの中に入ればあの晩の抱擁の感触を思い出し、やっとこさ眠りについてもあの晩のアンダーテイカーの優しい囁き声が夢の中でくすぐる様に響き、目が覚めればその想いに自身の胸が切なく痛んで、アンダーテイカーが好きだという気持ちは募る一方だった。
まさに今のマリアンヌは恋する乙女まっしぐら。
「(…んん…急がなきゃ……)」
今朝も恋患いで少し気怠くなった身体を起こして朝食の準備へと急いだ。
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一方アンダーテイカーも、あの晩マリアンヌに深く触れる事ができたのをきっかけに、ますます愛しく想う気持ちを募らせていた。
しかし、まだ自分の気持ちを伝えたわけではない。
調子に乗りしつこく触って、嫌われてしまっては本末転倒だ。
アンダーテイカーは、自身の中で疼く男としての欲望をなんとかおさえながら、なるべくいつも通りに接する様に心掛けていた。
しかし、それもいつまでもつだろうか…
それは皆目検討がつかなかった。
そんなある日の昼食時、アンダーテイカーはある“異変”に気付く。
「マリアンヌ〜?大丈夫かい?」
キッチンのダイニングテーブルに向かい合って座り、昼食を食べる2人。
アンダーテイカーは中々食の進まないマリアンヌに気付き、声をかけた。
「(…え?あ、あの……)」
ボーッと一点を見つめていたマリアンヌだったが、アンダーテイカーの呼びかけでハッと我に返った。
慌てて返事をしようとテーブルの隅に置いてあるメモとペンを取ろうとしたが、立ち上がったアンダーテイカーの手のひらが自身の額に触れたため、動けなくなってしまった。
少し冷たいアンダーテイカーの手がヒンヤリと気持ちいい。そんな事を考えていたらなんだか頭がボンヤリとしてきた。
「マリアンヌ、熱があるね〜。体温計を持ってくるからちょっと待っていておくれ。」
「(…え?!)」
そう言うと少し早歩きでアンダーテイカーはキッチンを出ていってしまった。