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君は小生の宝物/葬儀屋/黒執事

第8章 死神との生活








「そしたらマリアンヌ…君を抱きしめても…いいかい?」




「(!?)」



ニコリと弧を描いている口元、柔らかく光る黄緑色の瞳でアンダーテイカーは首をかしげながら両手を小さくマリアンヌの前にさしだした。


アンダーテイカーがマリアンヌに抱く気持ちはもう考えずとも明白だった。

あの冷たい雨の降る夜に出会った時からアンダーテイカーはマリアンヌに心奪われていたのだ。

しかし、マリアンヌはこの世に生を受けた瞬間から疎ましい存在として産み落とされ、愛も知らずに育ち、無慈悲に身体を売らされ続けた。


一緒に暮らすようになってからは少しずつ自分に心を開いて笑ってくれるようにもなったが、それはおそらく自身を親切な同居人として見ての事だろう。

今マリアンヌに自分の気持ちを伝えても、困らせてしまうだけだ。

愛も恋も知らずに育ってきたマリアンヌにいきなり“愛してる”と言っても逆に戸惑わせてしまう。


となれば順序としてはコッチが先だ。


髪を結い上げる時の様な、エスコートをする時の様な軽いスキンシップではない。


包み込んで抱きしめる。


そんな深く触れ合う行為をはたしてマリアンヌが受け入れてくれるか。

まずはそれを確認するのが先だとアンダーテイカーは考えた。

ここで拒まれてしまえば、自分の想いを伝えるのはおろか、同居人としてもまた1からやり直さなければならない。

少し賭けの様な展開になってしまったが、自身の男としての部分が疼きだしてしまった以上、せってしまう気持ちを止める事ができなかった。




しかし、マリアンヌを見ると驚いてかたまってはいるが、怖がり拒絶をしている様には見えない。


マリアンヌは、自分を拒絶する事はないだろうか。


アンダーテイカーはじっと見つめながらマリアンヌの反応を待った。


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