第8章 死神との生活
まっすぐと自分を見つめるヘーゼルの瞳のマリアンヌに、ニナは美少女好きの本能がメラメラと燃え上がるのを感じるが、この服も靴すらも持っていないワケありの少女の前では、いつものテンションを出す訳にもいかない。
必死に平静を装い声をかけた。
「さぁマリアンヌ、美しい服を作るには正確な採寸が必要なの。ヌード採寸をとりましょう。」
そう言って、アンダーテイカーの物と思われるぶかぶかのローブを脱がせると、マリアンヌは下着も着けていない裸の状態だった。
「(……………)」
しかも裸の状態を初対面のニナに見られてもなんの反応もない。よっぽどの事があったのだろう。
それに、背中を見れば首の付け根から腰にいたるまでついている無数の傷跡。
まだ生々しい傷もあり、ニナは思わず目をそらしそうになってしまった。
でもこれも自分が踏み込んで聞いていい話ではないだろう。ニナは手際よく採寸を済ませると、再びローブをかけて、裸足のマリアンヌに店のスリッパを出してやった。
「お疲れ様、これで採寸は終わりよ。今何枚かデザイン画を描いてみるから待っていて。」
「おや…終わったのか〜い?」
アンダーテイカーはマリアンヌに向かって手招きを2,3回すると、自分の隣に座らせた。
ちょこんと無表情で何も言わずに座ってる姿は本当に変態葬儀屋が愛玩人形に手を出した様にしか見えない。
しかし、ニナが色鉛筆を使っていくつかデザイン画を描いて見せてやった時だった。
「(………あ……かわいい……)」
マリアンヌの頬が少し笑った様に見えた。
アンダーテイカーも初めて見る表情だ。
「気にいってくれたかしら?」
ニナがニコリと問いかけると、つられるようにマリアンヌもニコリと頷いた。
その様子にアンダーテイカーもニナも少し安堵をする。
「よかったわ。マリアンヌは美人でトレビアンだからどんなドレスだって似合うわ♡」
張り切りだしたニナはさっそく布を裁断すると仮縫いをし、マリアンヌに見せてやった。
綺麗なデザイン画通りの服が出来上がっていく工程など見たこともなかったマリアンヌはニナの技術に目を奪われ楽しそうに見つめていた。