第8章 死神との生活
アンダーテイカーと暮らすようになって2週間もたつと、男1人で暮らしていた生活空間がみるみると変わっていった。
風呂場や洗面台には女物の石鹸が。
キッチンにはすべて2人分に買い直された食器。
マリアンヌの部屋には化粧ドレッサー。
そして女物の服や装飾品だ。
マリアンヌが1番に驚いたのはこの服達で、注文してから1週間もたたないうちに、大量の服や装飾品が届いた。当然マリアンヌにあてがわれた部屋には入り切らなかった為、空き部屋の1つを衣装部屋として使うことになる。
真っ黒なドレスに真っ黒なコルセット、真っ黒な帽子に真っ黒なリボンやアクセサリー、そして真っ黒なタイツにガーターリングに靴やブーツ。
「ヒッヒッ…やっぱりニナの作った服は最高だね!」
全て黒一色の物で並べられた衣装部屋にアンダーテイカーは満足そうに笑っていた。
そして、体調が落ち着いてくると、マリアンヌもできる事からアンダーテイカーの仕事を手伝い始めた。
掃除
洗濯
調理
買い出し
下働きの下女として働いていた年月が長かったマリアンヌは、すぐにアンダーテイカーの店での戦力になった。
マリアンヌも割とすぐに慣れてきたつもりでいたが、いつまでたっても慣れないモノがあった。
「(ヒーーーッ!!コッチ見ないで……)」
そう……いつまでたっても慣れぬモノ……
それは店の片隅に置いてあるアンダーテイカーお気に入りの人体模型だ。
「イ〜ヒッヒッ、そんなに怖がることないのに〜ねぇ?人体模型クン?」
「(十分に怖いです!!怖くて1人で留守番はできません!!)」
テラテラとした頭にギョロっと見つめてくる目。
マリアンヌはアンダーテイカーが検死で運んでくる死体よりも怖がった。
「検死の死体よりこっちの方が可愛いいじゃないか?おかしなマリアンヌだな〜ヒッヒッヒッ。」
「(…………………うぅ…)」
残念ながらアンダーテイカーにこの感覚は理解してもらえそうになかった。