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君は小生の宝物/葬儀屋/黒執事

第7章 死神との出会い






「そして偶然にも君と出会ってしまった。過去を覗いたら小生と同じ様な境遇だったからね…思わず連れて帰ってきてしまったんだよ…」



「(同じ境遇……?)」



「君も…ずっとひとりぼっちだったんじゃないのかい?」




「(…………っ!!)」



突きつけられた事実に思わず肩がピクリと動いてしまう。



「ねぇ……お嬢さん…ひとりぼっちのもの同士、小生と一緒にこの店で暮らさないかい?」




「(……え?)」



その上、まさかの提案に頭の中はパニック状態だ。


だが、なんとか冷静を装い少女は問いかける。



「(……あ、貴方が失くしたモノとはいったい何ですか…?愛していた恋人ですか?貴方のその提案は私を慰み者にするためですか…?)」


少女の言うことも最もだろう。

死んだ女の代わりとして慰み者になるなど、娼館にいた時とさほど変わりはない。


自分はもうそんな風な生き方はしたくないのだ。


「小生が失くしたものは、恋人なんかではない…大切にその人生を見守ってきたある血筋だ…だから君を慰み者にするつもりはないさ。」


アンダーテイカーはファトムハイヴ家との関係を少女に説明してやった。



「……どうだい?これで心置きなくイエスと言えるかな?」



「(そ、それは……)」



自分を疎んで売り払った領主夫妻に、金儲けの道具としてこき使い、ボロ雑巾の様に捨てた亭主、薄笑いを浮かべながら自分に跨り汚していった客達。


とてもではないが、少女は人を信じ、信頼する事など到底できなかった。


ではそれが人ではなかったら?

人の形をした人ならざるものならどうだろう?

この目の前にいる死神なら信じられるのだろうか。






「(………………)」


少女は信じてみたかった。

この男は自分の生きてきた人生で初めて助けの手を差し伸べてくれた者だ。

そしてなんの偶然かこの男は今まで自分を傷付けてきた人間とは違う。彼は死神だ。


本来ならあの森で倒れて死んでいるはずだったのだ。


少女はこの死神にこれからの新しい人生を賭けてみることにした。




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