第7章 死神との出会い
御者が驚くのも無理ない。
歳は若くとも使い古しの娼婦など、誰が拾うものか。
捨てられるからには何かしら“理由”があるのだ。
客からの人気がなくなった。
病気になった。
身籠った上に堕胎可能の週数を過ぎてしまった。
理由など上げてたらきりがない程でてくる。
「あぁ…正気だよ。まだ生きているから小生が連れて帰るんだ。」
しかし、御者の目の前にいるこの怪しい長髪の男はそんな事は気にも止めない様子だ。
「ったく変わったお客さんだな。ほら、だすからちゃんとつかまっておいてくれよ。」
チップを弾んでもらった御者は、余計な口を出して気分を損ねられても困ると思ったのか、それ以上は何も言わず、扉が閉まるのを確認すると、手綱を持ち直し馬車を出発させた。
「雨の中どうもありがとう、助かったよ。」
「毎度あり!またご贔屓に!」
店に着き、馬車が去って行くと、アンダーテイカーも急いで中に入った。
この泥だらけの身体をなんとかしなければ着替えも何もないだろう。
アンダーテイカーはまず、浴室へと向かった。
少女は完全に意識を失っているのか、裸にされて髪や身体を洗われていても全く起きる様子はなかった。
一通り洗い終えると隅々まで拭いてやり、空き部屋のベッドにうつ伏せで寝かせてやった。
「かわいそうに……こんなヒドい目にあって……少し待っていておくれ。」
アンダーテイカーは独り言の様にぶつぶつと呟くと、地下室から応急処置の道具をもって戻ってきた。
ランプのついた薄暗い部屋でも、少女の背中の傷跡ははっきりと残酷さを物語っており、痛々しかった。
殆どが時間のたった傷跡だったが、何ヶ所か新しい傷があったため、アンダーテイカーは化膿しないように、消毒と縫合をすると、薬を塗ってガーゼで覆ってやった。
「傷はこんなもんだろう…」
あとは目覚めるのを待つだけだが、ろくな食事を与えられていないのか、このやせ細った状態にこの傷だ。
発熱や感染症を起こしたら大変だ。
アンダーテイカーは点滴の用意をしに再び地下室へと向かった。