第7章 死神との出会い
「これは…いったいどういう事だ……」
アンダーテイカーの目に飛び込んできたもの。
人生の終わりを示すマークがでていたフィルムから、みるみると「END」という文字が消えていくではないか。
「何が起きているんだ……」
シネマティックレコードから「END」マークが消えるなど、今まで見たことがなかった現象だ。
アンダーテイカーは目の前の光景が信じられず只々立ち尽くしてしまう。
『……まだ……死に…たくない……』
「……うっ!!」
またあの声だ。
「この少女からか……」
この声は耳から聞こえてくるというよりは自身の神経に直接響くように入り込んでくる為、アンダーテイカーは額に手を当てて少し目眩を起こしてしまった。
『……シニ…タクナイ……!!』
少女からは今ここでは死にたくはないとう強い意思がひしひしと伝わってくる。
この目の前で倒れている喋る事のできない少女が自らシネマティックレコードの「END」マークを消したのだろうか。
だとしたら相当な意思の力だ。
ほんの興味本位で近づいたアンダーテイカーだったが、気付けば少女を抱き上げていた。
顔や長い髪は泥水で汚れており全身は真冬の雨で死体のように冷たい。
だが、まだ死にたくないと強い意思を放つ少女の心臓は確かに鼓動し全身に血液を送っている。
長い間時を共にしてきたファントムハイヴ家を失い孤独感に苛まれていたアンダーテイカーに、この世に生を受けたときから孤独だった少女。
アンダーテイカーはなんとなく惹かれ合うものを感じずにはいられなかった。これが運命というものなのだろうか……
「小生が助けてあげるから……安心おし。」
そう呟くと、アンダーテイカーは少女を抱えて馬車まで戻っていった。
「待たせてすまなかったね。出しておくれ。」
「あいよ!!ってオイ!!お客さん正気か?!」
死体のように動かない少女を大事そうに抱えて戻ってきたアンダーテイカーに御者は目を見開いて驚いた。