第7章 死神との出会い
少女には無数の傷痕があったため、奴隷としての価値はなく、森に捨てられることになった様だ。
「(はぁ……はぁ……どうしよう……)」
寒空の中、日が傾きかけた森で、少女は白い息を吐きながら助けを求めて裸足のまま歩き出す。
だが、どこの森なのかもわからず、方角もわからない。闇雲に歩き回っても助かりっこない。
だからといってここでじっとしてても凍え死ぬだけだ。
少女はどこでもいい、どこかにつながる街道に出てほしいと必死に足を動かした。
しかし、不運な事に、雨が降り出してきてしまった。
真冬の雨。
またたく間に身体の体温が雨により奪われていく。
「(どうしてよ……どうして私がこんな目に…)」
震える身体で力なく少女は呟く。
出生から生い立ちから今に至るまで、少女に味方する者は誰一人としていなかった。
不運な事に、天候までも味方になってくれる気は無さそうだ。
段々と痛んでいたつま先の感覚がなくなっていく。
段々と足どりが重くなり、指先が痺れだしてきた。
もうここまでか……
雨の降る暗い森の中で少女は崩れ落ちるように倒れこむ。
──バシャッ──
雨でぬかるんだ地面に倒れると泥水が音を立てて跳ねた。
意識を手放す直前まで少女の胸の中を占めていたのは、絶望と自分をこんな目にあわせた人間に対する恨みという負の感情のみだった。
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「………これで終わりか……」
シネマティックレコードはまさに今彼女が倒れている場所を映し出している。
うっすらと「END」マークが出でてきた為、この少女の人生は終わりだ。やはりここで死ぬ運命だったのだろう。
そうなれば長居は無用。
アンダーテイカーは死神離脱組。かつての同胞たちに出くわしては面倒な事が起こりそうだ。
さっさと退散しようと思ったその時だった。
『……誰か……タス……ケテ……』
「?!」
今の声はなんだ。
この少女は喋る事ができない上に今は気を失っている。
この辺りに御者以外の気配は感じられなかったが、誰かいるのだろうか。
もう一度周りを見渡そうとしたアンダーテイカーだったが、目を疑うような出来事が目の前で起こり、思わず驚愕した。