第7章 死神との出会い
領主夫妻に連れられてとある場所に着くと、建物の中から恰幅の良い男が出てきて少女を値踏みする様に厭らしい目で見た。
その目つきが舐め回すような下品な視線で、少女は思わず真顔のまま身震いをする。
まだ3歳という幼い年だがなかなかの上玉になりそうな要素を持っている。
この男はすぐに少女を気に入った様だ。
その様子を見て正妻が高値をふっかけたため、男は顔をしかめて値下げを要求したが、ニヤリと悪い笑みをこぼした正妻が、男の耳に「この子は声をだすことができない」と耳打ちすると、しばらく考え込んだ後、男はその額を領主夫妻に手渡した。
少女の障害は利用できるとふんだのだ。
「さぁ嬢ちゃん、ここは娼館だ。って言ってもまだ分からないだろうけどな。今日からお前はここで働いてもらう。まぁ客を取るのはまだ先の話だがな、支払った金額以上は稼いでくれよ。」
「(……………)」
支払った分は稼いでもらう。
その言葉で、自分はこの男に高値で買われて、そのかわりに自分は何らかの形でそれ以上の利益をだし、この男に貢献しなくてはならなくなったらしい。
きっとここにも、自分を守り愛してくれる存在はいないのだろう。聡明な少女は無慈悲な運命をただただ受け入れるしかなかった。
「それと、ここでは亭主である俺の命令が絶対だ。逆らうんじゃないぞ。」
そして、その言葉で、きっと自分の意思や気持ちなどは一切優先されないだろうことも悟った。
少女はすぐに下働きの下女として朝から番まで働かされた。
掃除に洗濯、ベッドメイク、調理補助など、とにかく全てだ。
喋れない事が不便になる場面もあったため、仕事の合間に亭主である男から読み書きを習った。また唇の動かし方などを独学で研究し、筆談や読唇でのコミュニケーションがとれるように必死に学んだ。
そして月日はたち少女が10歳になると、亭主は店にくる客の前にわざと少女の姿を見せるように仕事をさせた。
亭主のよみ通り、美しく成長した少女は常連客の間ではすぐに話題となった。