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君は小生の宝物/葬儀屋/黒執事

第7章 死神との出会い





「そうかい…ご忠告ありがとう。」



アンダーテイカーは礼を言うが、言葉とは真逆に馬車を降りようとしている。



「お、おい?お客さん?やめとけって!」



「悪いけど、ここでちょっと待っていてくれるかい?チップは弾むよ。」



そう言うと、アンダーテイカーは御者の手に数枚の金貨を握らせると、雨の中馬車を降り倒れている女らしき人物の元へと向かった。



「……あいよ!!」



握らされたチップの額に驚くと、御者は威勢のいい返事をして、馬車を路肩に止めた。









近づいて見てみると、御者の言った通り倒れていたのは女だった。


ボロ切れのような服を着て、うつ伏せに倒れている。




「…………………」




背中に手を当てると下着は着けていなかった。

当てた手に少し力を入れると、微かに心臓の鼓動を感じる。まだ死んではいないようだ。


この女はここで死ぬ運命なのかどうかは、リストを持っていないアンダーテイカーには分からない。


辺りを注意深く見渡すが、かつての同胞である死神の気配は感じられなかった。



「ちょっと見せてもらおうかな……」



背中に隠してあるデスサイズを握り、チラリと馬車の方を見れば御者はアンダーテイカーには構うことなく、握らされた金貨の枚数を数えては下品な笑みを浮かべていた。



その隙に大鎌をひとふりすれば見えてくるこの女のシネマティックレコード。



アンダーテイカーは食い入るように、この女の生い立ちを目で追っていった。







──────────



女は広大な領地を所有する、金持ちの領主の屋敷で産声を上げた。


しかし、それは正妻との子ではなく、使用人との間にできた子。望まれて産まれた命ではなかった。


領主が使用人の妊娠に気づいたのも、正妻が夫の不貞に気づいたのも、堕胎が可能な数週をとっくにすぎてしまった頃で、どの道出産させるしか選択肢が残されていなかった。




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