第6章 死神とスパイス
「きっと窖(あなぐら)君の所にいる子猫ちゃんの仕業だね…」
「(こ、子猫ちゃん?)」
アンダーテイカーは藍猫の事を言っているのだろうか?
「マリアンヌも会っただろう?いるんだよね〜可愛い猫の皮を被った獰猛な虎がね。」
大人の男女をこんな処までふっ飛ばしてくるなど、どう考えても人間技ではない。
それをあの小柄で可憐な容姿の藍猫がやったと言うのだろうか…
「きっとなんたかんだ甘い伯爵のかわりに窖君が、お灸をすえたんだろう…」
「(……あ、あの……)」
「まぁいい。邪魔も入ったし、じきに暗くなる。それに寒いから、マリアンヌと楽しむのは店に帰ってからにするよ。人気のない路地裏で致すのもスパイシーで悪くなかったんだけどね〜」
アンダーテイカーはマリアンヌの顔を覗きこみニヤリと笑ってみせた。
「(ア、アンダーテイカーさん!!)」
冬の日暮れは早い。
よくよく周りを見渡せばどんどん暗くなってきていた。
アンダーテイカーは少し着崩れてしまった振り袖を手早く直してやると、足袋を履かせて立たせてやった。
「まだ痛いと思うけど、ニナの店まで少し辛抱できるかい?」
「(は、はい。大丈夫です。座っていたら大分楽になりましたので、心配いりません。)」
まだ若干足は痛いが、情事の最中に邪魔が入ったのだ。欲望を燻らせたままのアンダーテイカーと店に戻ってからの事を考えると、色々と恐ろしくなってしまい、足の事など気にしていられなかった。
案の定、ニナの店に着くと、マリアンヌの着替えを手に取りすぐに馬車を呼んだアンダーテイカー。
ニナが晒(さらし)を巻かなかった事に怒り狂っていたがまるで聞く耳を持たずに、馬車が到着すると、マリアンヌを押し込むように乗せてしまった。
「マリアンヌ〜お楽しみはベッドの中でしようね〜」
「(……………)」
マリアンヌのイヤな予感は的中であった。