第6章 死神とスパイス
「………?」
しかし、藍猫は表情を変えぬまま首を傾げてしまった。
「マリアンヌちゃんごめーん、藍猫も中国人だから英語は不慣れでね。まだ読み書きはできないんだ。藍猫、マリアンヌちゃん、“こちらこそ”って言ってたよ。」
「(あ…すみません……)」
劉の言葉をきいた藍猫はコクコクと頷いてみせた。
すると今度は一際甲高い声がマリアンヌを呼んだ。
「マリアンヌーー!」
振り向くと、そこにはシエルとエリザベス。
エリザベスは思いきり手を振りながら近づいてくると、マリアンヌの着ている振り袖に釘付けになっていた。
「いや〜ん!!マリアンヌのドレスとっても可愛い!それどうしたの??私も着てみたいわ♡」
「(これは日本という国の振り袖という物です。ニナさんがエリザベス様の分も仕入れたと仰ってました。手紙もだしたそうなので、もう届いてるのではないでしょうか?)」
「そうだったの?私この所、シエルのタウンハウスでお世話になってたから、きっとすれ違いになってしまったのね……今頃お母様が受取ってくれてるといいんだけど。」
「(大丈夫ですよ。エリザベス様の振り袖は水色でとても素敵でしたよ。)」
「本当に?!いや〜ん!!楽しみだわ!ねぇシエル!明日ニナのお店に遊びにいきましょう!!ねぇいいでしょ?」
「ま、まてリジー、とりあえず落ち着け。明日の仕事の予定を確認してからでないと返事はできない。」
今度はクルリとシエルに向きを変え、眩しい程の笑顔でおねだりを始めた。
「(フフフ、可愛らしいわ…)」
マリアンヌが心なかで呟くと、座っていた劉がシエルに近づき声をかける。
「伯爵、執事君はもう控室に行ったの?!」
「あぁ、たった今リジーと見送ってきた所だ。」
「執事君を見送る?そういえば見かけないね?いったいどこに行ったんだい?」
「それはだな……」
アンダーテイカーとマリアンヌが不思議そうにシエルと劉の顔をみると、シエルが不敵な笑みをこぼしながらここ連日の出来事と今日に至るまでの流れを話してくれた。