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君は小生の宝物/葬儀屋/黒執事

第6章 死神とスパイス






「(ニ、ニナさん…)」



「ニナも酷い言いようだね。マリアンヌは絶対に小生の店から出すつもりはないさ。」



「ハンッ、言ってなさいよ!少しでもマリアンヌがあんたに嫌気をさしたらその時は容赦なく引き抜きに行くからね!」



「あぁ、それなら構わないさ。そんなこと、絶対にありはしないからね〜ヒッヒッ。」



強気にでてくるアンダーテイカーに心底ニナは腹が立つようで、より一層目尻を釣り上げ睨んだ。




「そうだ、マリアンヌ。せっかく着付けをしたんだ。小生とどこかに出かけないかい?」



「(え…?いいんですか?)」



「いいとも。ニナ、振り袖はこのまんま小生が頂いていくよ。」


すると、アンダーテイカーは財布から紙幣を取り出すと、数えもせずにニナに渡した。



「はぁ?!」


こんな高価な反物、値段も聞かずに金を出すヤツがいるかと突っ込みたかったが、渡された紙幣を数えればニナが販売価格として出そうと思っていた値段にチップが上乗せされた金額だった。



「それで足りるだろう??」



アンダーテイカーは首を傾げながらニタリと笑ってみせる。



「ナニから何までムカつくヤツね!これで結構よ!」


ニナは受け取った紙幣をメグが持ってきたキャッシュトレーに乗せると領収書を書きなぐり、フンッと鼻をならしながら突き出した。



「イッヒッヒッ、ところで、今日はロンドンで何か楽しい事はやってないのかい?」



「楽しいこと?」



「そ、マリアンヌとデートにぴったりな催し物はやってないのかい?」



「そ、そうね…冬だし大きな物は殆ど終わってしまったけど……んー、今日だと…」



ニナは腕を組みながらアレコレと思い出すように答えた。



「ウエストミンター寺院で聖ソフィア学院主催の聖歌隊コンサート…とか、コヴェント・ガーデン歌劇場でワーグナーの上演、クリスタルパレスで帝国におけるインド文化とその繁栄展に……大英博物館で世界の通過博覧会……こんなところかしらね?」



「ほう、結構やってるじゃないか。」



灰色の季節と呼ばれている冬のロンドンでも、まだ楽しそうな催し物は残っていたようだ。






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