第6章 死神とスパイス
「着物にも種類があって、今マリアンヌが着ているのは振り袖と言って、格式の高い第一礼装なんだ。普段着るような着物も基本は変わらないけど、もう少し着心地は楽かな〜」
「(そ、そうなんですね…)」
どうりで豪華なわけだ。
マリアンヌはアンダーテイカーの解説に納得がいったのかコクコクと頷いてみせた。
「ほ〜ら、出来上がりだ。」
アンダーテイカーは最後の帯締めをしめると、試着室内に設置されているドレッサーにマリアンヌを座らせる。
「次は髪をセットしようね。」
毛先をカールし低めの位置でまとめれば、少し大人っぽくなり、それと同時に抜いた衿から覗く背中の傷跡もうまい具合に隠してくれた。
「さぁマリアンヌ、仕上げだ。」
そう言って、軽くおしろいをはたき、真っ赤な口紅を引いてやると、マリアンヌはアンダーテイカー好みの艶やかな姿に出来上がった。
「ほら、鏡を見てごらん〜」
アンダーテイカーが促すと、マリアンヌは立ち上がり、自分の立ち姿を見て思わず驚く。
豪華な振り袖に身を包み、背中には幾重にも重なった花びらのような飾り帯。
化粧はほとんどしなかった分、真っ赤な唇が強調され艶やかな仕上がりになっていた。
「(こ、これが私?!)」
初めて着る装いにマリアンヌは目を疑ってしまった。
「ほら、きっとニナが苛々しながらマリアンヌが出てくるのを待ってるはずだよ。早く見せておあげ。」
「(は、はい!!)」
マリアンヌは歩きにくいのか、おずおずと小股で歩きカーテンを開けると、照れくさそうにニナを見つめてみる。
すると、その姿にニナは狂喜乱舞し、抑えきれなかった雄叫びを上げてしまった。
「トレビアーーン!!!日本の着物もこんなに美しく着こなしてしまうなんて、やっぱりマリアンヌは素材がいいんだわ♡もう変態葬儀屋の所なんて辞めさせて、この店でモデルとして引き抜きたいくらいだわ。」
ニナの感想は遠慮の欠片もなく言いたい放題だった。