第6章 死神とスパイス
「何よ変態葬儀屋、マリアンヌはこれから着替えるの。その手を離して頂戴。」
その睨み上げる視線は研がれた刃物さながらだ。
「ニナこそその手を離しておくれ…マリアンヌの着付けは小生がやりたいからね。」
「はぁ?!」
「(アンダーテイカーさん……ニナさん……ど、どうしよう…)」
それぞれにマリアンヌの手を引きながら激しく睨み合う。
2人に挟まれたマリアンヌは、当然だが戸惑いの表情を浮かべてしまう。
「何言ってんのよ。着付けは私がやるわよ!英国風のアレンジもしたいしね。」
「せっかくの上等な反物なのだから、アレンジは必要ないさ。それに小生、帯は胡蝶結びか花結びがいいんだ。こう言っては何だか、仕入れたばかりのニナには、それができるのかい?」
アンダーテイカーは、前髪で隠れた顔で意地悪にチラリとニナを見た。
「チッ……」
挑発的な言葉にカチンときたニナであったが、確かにニナは仕入れたばかりで基本的な着付けと、帯も基本的な文庫結びしかできない。
「フン!そこまで言うなら分かったわよ。そのかわり、私の店で変態行為は一切禁止だからね!」
「イッヒッヒッ、わかってるさ〜」
そう言うと嬉しそうにアンダーテイカーは振り袖セットを一式試着室に持っていくと、マリアンヌと入っていきカーテンを締めた。
「(アンダーテイカーさん、着付けもできるんですか?)」
日本の文化に詳しいのは知っていたが、実際に着付けが出来るとは驚きであった。
「あぁ、できるさ〜帯も色々な結び方があってね。マリアンヌに似合うようなとびきり可愛い結び方にしようね〜」
そう言うと、アンダーテイカーはマリアンヌの着ていたワンピースを慣れた手付きで脱がせていった。
大人しく脱がされていたマリアンヌであったが、下着まで脱がせようとしたところで、思わず制止をしてしまう。
「(ア、アンダーテイカーさん?!下着は脱ぐ必要ないですよね……?!)」
そんなマリアンヌの問いに対して悪い笑みを浮かべている死神に、マリアンヌはゾッと嫌な予感が走った。