第5章 死神は御満悦
「(アンダーテイカーさん!!ありがとうございます!私、嬉しいです!)」
「イッヒッヒッ、そうかい。」
これでアンダーテイカーの株は安泰だ。
しかも、双方にしっかり打つべき釘は打っておいた為、マリアンヌが自分をないがしろにすることも無いだろう。
それに鳩は頭がいい。
忠誠を誓わせておけば後々何かの役に立つかもしれない。我ながらうまいことやったなと自然と口角が上がった。
「(そしたら名前を付けてあげないといけないですね。)」
マリアンヌはカウンターの上に乗ってるカゴに手を伸ばすと、鳩を抱き上げてやった。
「名前か……そうだね、何がいいかね。」
「(この子、翼の先と尻尾が白いのが可愛いです。)」
この鳩は白にグレーの斑模様で、翼の先と尻尾だけは真っ白な珍しい色だった。
「それならマリアンヌ、“ビャク”というのはどうだい?」
「(ビャク、ですか?)」
珍しい響きにマリアンヌは首を傾げてしまう。
「ビャクはね、日本語の“白”という字の複数ある読み方のうちの1つなんだ。マリアンヌ、前に日本に行ってみたいと言っていただろう?どうかなと思ってね。」
アンダーテイカーの提案が気に入ったのかマリアンヌは笑顔で頷いて見せた、
「(す、すごい素敵です!では名前はビャクにしましょう。改めて今日から宜しくね!ビャク。)」
一方的に名前を決められてしまったビャクだったが、この葬儀屋にしてはセンスのいい名前と感じて気に入ったのか、得意満面な顔で2人の顔を交互に見つめてみせた。
「ヒッヒッ、彼も名前は“ビャク”で異論はなさそうだね。」
マリアンヌの言葉をヒントに思いつきで付けた名前だったが、双方共にすんなりと気に入ってくれてアンダーテイカーは内心安堵していた。
例え名前の1つであったとしても、マリアンヌが誰かに贈り物をするなど、とてもじゃないが許せたものではない。
しかしそんなアンダーテイカーの思惑など知らずに、その名前を気に入ったマリアンヌは、無邪気にビャクを撫でていた。